刑事マディガン – MADIGAN(1967年)

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スタッフ

監督:ドン・シーゲル
製作:フランク・P・ローゼンバーグ
脚本:アンリ・シモン、エイブラハム・ポロンスキー
撮影:ラッセル・メティ
音楽:ドン・コスタ

キャスト

マディガン / リチャード・ウィドマーク
ラッセル総監 / ヘンリー・フォンダ
ジュリア / インガー・スティーヴンス
ボナーロ / ハリー・ガーディノ
ケイン本部長 / ジェームス・ホイットモア
トリシア / スーザン・クラーク
カステリオーネ / マイケル・ダン
ベネッシュ / スティーヴ・イナート
ジョーンシー / シェリー・ノース

日本公開: 1968年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: パラマウント


あらすじとコメント

引き続きNY市警の刑事ドラマ。前回の「探偵物語」から15年という歳月が刑事ドラマをいかに変えさせたがわかる作品。

アメリカ、ニューヨーク23分署。ヴェテラン刑事マディガン(リチャード・ウィドマーク)と相棒のボナーロ(ハリー・ガーディノ)は、事情聴取の任意同行のためベネッシュ(スティーヴ・イナート)の部屋へ踏み込んだ。情婦と一緒で寝起きを襲われたベネッシユは渋々同意をすると、着替えを取れ、と全裸の女をベッドからだした。マディガンたちが一瞬、女性に気を取られた隙にベネッシュは拳銃を取りだし、二人の拳銃を奪うと逃走。慌てて追いかけるが逃げられてしまう。

当然、警察内部で問題になり、警視総監ラッセル(ヘンリー・フォンダ)の耳にも入ってしまう。謹厳実直で一分の妥協も許さないラッセルは、すぐに、若い警官時代からの親友で本部長ケイン(ジェームス・ホイットモア)に、彼らを懲戒免職にせよと命ずるが、ケインは彼らのような実力のある刑事たちはいないとかばった。結果、ラッセルは3日以内にベネッシュを逮捕せよとの命令を下す。

しかし、ラッセルは直前、別の部下からケインがマフィアと裏取引しているという情報を掴んでいた・・・

犯罪を追う刑事たちのバック・グラウンドを描いたドラマ。

一瞬の隙をつかれて拳銃を奪われる刑事たち。それが犯罪に使用されないかと心配する設定は黒沢明の傑作「野良犬」(1949)に似ている。

本作では主役たちは単なる任意同行としてしか聞いていないが、実際は殺人事件容疑者で銃器を所持し、手配寸前だったという展開になる。ここで先ず、警察署同士の縄張り争いがあり、他の分署にはちゃんとした情報が行き渡っていないことがわかる。

更に映画は主役刑事二人の家族の姿を描いていく。ウィドマークはアイルランド出身で、無骨で気性が激しく女にモテるという設定。彼の妻は常に帰宅もままならないうえ、危険を顧みず、そのくせ出世に興味もない夫に孤独感と肉体的に欲求不満を抱えている。そんな妻のことを気にしつつも昔の恋人のクラブ歌手の部屋へ行ったりと中々のプレイボーイでもある。

一方、相棒はイタリア系で子供にも恵まれ家族を大事にする男。性格が違うからこそ相棒として上手く行くという設定だ。そんな二人が地道な捜査活動を追っていく展開になる。

しかし、それでは今までの刑事ドラマと同じだとばかりに、謹厳実直な警視総監も若く綺麗な人妻と不倫をしていたり、幼馴染の本部長は警官である息子の不始末でマフィアとの問題を抱えているというサイド・ラインが同時進行する。

結論から言って、上層部の話は余計だと感じた。主役の刑事たちとは違い、はっきりとした結末が用意されていないから。確かに物語上の結果はでるが、どうも影が薄いのだ。しかも演じるのが名優のヘンリー・フォンダと、いつも脇役ながら渋い演技をするジェームス・ホイットモア。彼らも実に上手い演技で押して来るが、どうにも本筋と上手く繋がっていない。

まったくの余談だが、本作の主演ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ、ジェームス・ホイットモアの出演者三人が以後、合衆国大統領役を演じている。一本の映画で、後に三人もの大統領役を輩出したのは他に「十二人の怒れる男」(1956)だけだと記憶している。政治ドラマも好きな自分としては、そういったことを発見すると妙に嬉しかったりする。

監督はクリント・イーストウッドが敬愛するドン・シーゲル。ステーヴ・マックィーンの「突撃隊」(1961)、イーストウッドの「マンハッタン無宿」(1968)など、渋いアクションを得意とする監督だ。しかも、上層部に楯突く骨のある下っ端や、格好良いアウトサイダーが活躍するのが常道で、男の生き様をストレートに描く作品が多い。

ご贔屓監督のロバート・アルドリッチにも似た感じもするが、シーゲルの場合、アルドリッチほどの男臭さはなく、どこか、都会の匂いがする。それはアルドリッチと違い、女性の絡ませ方が上手いからだろう。

本作もそういったシーゲル節漂う展開を見せる。DVDが980円で発売されているので購入し、再見したが、やはり上層部の場面などいささか冗漫な場面もあり、リズム感が統一されていないので手放しでおススメはできないが、小気味いいアクションは切れがあり、安心して見ていられる。

シャープな画面作りやリズミカルな編集で、都会的無常感が漂うが、どこか正統派浪花節だとも感じる作品。だが、そこにこそシーゲルの本領があるのだ。

余談雑談 2007年10月20日
好きな女優のひとりだったデボラ・カーが死んだ。 このサイトでも「黒水仙」「回転」「悲しみよこんにちは」など数点扱ってきた。イギリス出身でハリウッドでも成功した女優であり、知性的で、クールなイメージだが、一度、火が着くと誰も消せない底知れぬ情