スタッフ
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
脚本:ミッシェル・オジャール、H・ヴェルヌイユ
マルセル・ジュリアン
撮影:マルセル・グリニョン
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
キャスト
ロッコ / ジャン・ポール・ベルモンド
マレク / リノ・ヴァンチュラ
シュタイナー / レジナルド・ケーマン
ペパ / アンドレア・パリジー
カステリアーノ / ゲルト・フレーベ
ミッチ / ベルナール・ブリエ
アンジェル / アン・マリー・コフィネ
ハリビ / ピエール・ミラール
ロベルト / アンリ・ランベール
日本公開: 1964年
製作国: 仏、伊 ゴーモン作品
配給: 松竹映配
あらすじとコメント
引き続きジャン・ポール・ベルモンド。今回は個人的にご贔屓のリノ・ヴァンチュラと共演した男臭いアクション作品。
北アフリカのとある田舎町。砂漠を縦横無尽に横断し、荷物を届ける輸送会社に勤める若いロッコ(ジャン・ポール・ベルモンド)、ヴェテランのマレク(リノ・ヴァンチュラ)らは気の荒いトラック・ドライバーたちだ。ある日、経営者カステリアーノ(ゲルト・フレーベ)が新車のトラックを購入した。ドライバーたちは、この新車を転がすのは自分だと、皆が浮かれていた。しかし、カステリアーノは流れ者のドイツ人シュナイダー(レジナルド・ケーマン)を雇い入れ、彼に運転させると言い渡す。どうやらヤバイ品物を運ぶ模様だ。そのためには何も知らぬ新人が最適だろうと思ったからだ。事情を知らないドライバーたちは面白くなかったが、新人歓迎会を催し、飲んだくれた。
翌朝、マレクやシュナイダーが出社すると新車のトラックが消えていた。何と、ロッコが早朝、愛人のペパ(アンドレア・バリジー)を乗せ、出発したというのだ。社長は激怒し、シュナイダーを即刻クビにして、マレクに絶対に取り返して来い、と厳命する。
助手を同乗させ出発すると町外れでシュナイダーが待っていた。「俺を同乗させろ」断るマレクだったが、助手は運転できないし、俺だったら交代で昼夜ぶっ通しで追跡できると真顔で言った。渋々、助手と交代させ出発するマレクにシュナイダーが告げた。
お前は何も知らないのか。あのトラックには10万ドルのブツが積み込まれているんだ・・・
荒涼たる砂漠地帯で繰り広げられる男臭さに満ちたアクション編。
草木が一本もない小さな砂漠の町。 そこにあるアフリカ各地に物資を輸送する運送会社。車両は大小様々なトラック。社長はいかにも腹黒そうな男。ドライバーたちも粗忽で無骨で個性的な面々だ。皆が大酒呑みで女好き。いかにも設定だ。
その中で、飄々としているベルモンドと、重厚だが単純なヴァンチュラがメイン。その二人に偽造パスポートを持つ、どこか謎めいたドイツ人と美人が絡む。
ただ、ストーリィや展開はかなり大雑把だ。監督はアンリ・ヴェルヌイユ。ここで扱った「冬の猿」(1962)、「ダンケルク」(1964)の監督。しかも三作ともベルモンドが主演している。
本作はその丁度真ん中の作品にあたる。面白いのは三作を見比べるとタッチがまったく違い、とても同じ監督とは思えない作風ということ。更には前々回に紹介した「恐怖に襲われた街」(1973)でも、再度ベルモンドと組んでいる。
本作は荒くゴツゴツとした場所が舞台だからか、かなり粗っぽさが強調されている。緻密で的確なストーリィ展開を期待する観客には許容できない作劇法かもしれない。
これは、「恐怖に襲われた街」のときも書いたが、アクションがメインとなる作品の場合、出演者の力量に重きを置いて、ストーリィを的確に語ったり、細かいディテールなどは端折る監督だという印象が強い。
また、本作では、メインとなるのがトラックなので、スポーツカーのような目もくらむようなスピーディなアクションはない。例えば、チータなどが獲物を追うのでなく、象同士の戦いのような、どちらかというと重量感あふれるアクションなのだ。
ゆえに簡単に車体が砂に埋まったり、ジグザグの坂道でガードレール代わりのブロックや岩に車体をぶつけ、下の道にいる相手に落としたりするというアクションがメイン。
しかし、そればかりが連続するわけではない。どこか、のどかな展開が挿入されたり、今見ると何とも間が抜けた印象を受けるかもしれない。だが、そういった展開の中でこそ、主役二人の個性が際立っていく。実際、ベルモンドもヴァンチュラも実に良い味を醸しだしている。
アクションだけに頼らず役者の実力を引きだしていくのも監督の力量だろう。荒涼感といい、男臭さといい、どこか「恐怖の報酬」(1952)に似ていると感じた。ただ、胃が痛くなるようなスリルとサスペンスはないのだが。
傑作ではない。しかし、駄作でもない。個人的には背景にマッチした大雑把さがゆえに、妙に嫌いになれない作品と位置付けしている。