スタッフ
監督:ジャック・ドレー
製作:アラン・ドロン
脚本:ジャン・コウ、クロード・ソーテ、J・ドレー
撮影:ジャン・ジャック・タルベス
音楽:クロード・ボーラン
キャスト
フランソワ / ジャン・ポール・ベルモンド
ロック / アラン・ドロン
リナルディ / ミッシェル・ブーケ
ローラ / カトリーヌ・ルーヴェル
エスカルケル夫人 / フランソワーズ・クリストファ
リナルディ夫人 / コリンヌ・マルシャン
ジネット / ニコール・カルファン
ポリ / アンドレ・ボレ
ダンサー / クリスチャン・デュ・ティリエ
日本公開: 1970年
製作国: フランス アデル・プロ作品
配給: パラマウント
あらすじとコメント
このところジャン・ポール・ベルモンド主演作品を続けている。今回もそうだ。で、当時人気を二分していたアラン・ドロンとの共演作品にしてみた。
1930年フランス、マルセイユ。ケチな窃盗で服役していたチンピラのロック(アラン・ドロン)が出所してきた。
彼はすぐに手下を連れ、自分を密告したと思しき男の店にお礼参りに行き、続いてかつての恋人ローラ(カトリーヌ・ルーヴェル)を探した。しかし、彼女は現在フランソワ(ジャン・ポール・ベルモンド)と付合っていた。黙ってローラを連れて行こうとしたロックと引き止めたフランソワとの間で殴り合いになる。まったく互角の闘いで結果、引き分けとなるが、奇妙な友情を感じる二人。
そこでフランソワはロックに一緒に組んでヤマを踏まないかと持ちかける。それは競走馬を誘拐すること。仕事は簡単に片付くが、誘拐馬の対抗馬に大金を賭けて失敗。今度は港の強腕の荷役をドイツのボクシング・チャンピオンとして自分の手下とのタイトル・マッチを行い掛け金をせしめようとするが、予想以上に荷役が強く、手下は第一ラウンドでKO負けしてしまう。
中々上手くいかないと意気消沈する二人に魚市場の六割を占めるエスカルケル夫人が声を掛けてきた・・・
大スター二人が初めてガブリと四つに組んだ娯楽作。
夢と野望を抱く若者二人が、様々な困難を乗り切 って伸し上がっていく姿を描いていく。
面白いのは1930年代という時代背景。二つの世界大戦に挟まれた狂乱の時代で、派手なファッションやクラシック・カー、チャールストンという踊りといったデカダンスな世界。ハリウッドでも時を同じくしてこの時代を描く、俗にいうノスタルジー映画が量産されていく。
こういった時代背景が主役二人にそれぞれの見せ場を作りやすいと思ったのだろうか。実際に二人の衣装はワンシーンごとに代わり、計43着。常に帽子を被り、葉巻をくわえ、殴り合いからマシンガンをぶっ放すという徹底した娯楽作に仕上げた。内容もコミカルな場面から、スリルを盛り上げるシーンなどかなりバランス配分を考えた展開で飽きずに楽しめる。
これはアラン・ドロンが製作を兼ねているからだろう。当時、日本ではクールな二枚目として絶大な人気を誇っていたが、実際には商才に長けた男だった。彼は製作プロダクションを作り、更に自身の名をつけた香水や洋服ブランドまで持っていたし、本作の日本上映の際、配給会社数社で競わせ値を吊り上げさせたのは、関係者の間で話題になった。
そんなドロンは本作では、クールな二枚目に徹し、コミカルで激しい動きは専らベルモンドに受け持たせた。その『動』と『静』のキャラクターが完全に確立し、誰が見ても分り易いように作ってある。
また、個人的に本作で一番面白いと感じているはタイトル。この『ボルサリーノ』はイタリアの老舗有名帽子屋の名前。タイトルのロゴまで同じである。
最近は世界中でキャップやニット帽以外の帽子を被るという流行が消滅しつつあるので、知らない御仁も多いかとは思うが、現在で言う『ルイ・ヴィトン』や『エルメス』といった類である。
実際、世界的有名ブランドの名をタイトルに冠したのは本作と「ティファニーで朝食を」(1961)ぐらいだろう。確かに以後もシャネル創設者の人生を描いた「ココ・シャネル」(1982)や、彼自身のドキュメンタリーの「アルマーニ」(2000)などはあるが、娯楽映画としてのタイトルは少ない。
しかも、「ティファニーで朝食を」はティファニーの宝石そのものに憧れる女主人公を描いた作品だからイメージは良いが、本作はギャングのハナシである。その上、アラン・ドロ ンはイタリア系という設定だから、知らない人が見るとボルサリーノ帽子屋はマフィアから派生したと勘違いされるかもしれないのだ。そしてタイトルは、何とその帽子屋のボルサリーノから来ているのだ。
だが、単純に考えてはいけない。本作が描きたかったことは、世界最高級の帽子を何種類も持てる身分になりたいと願う破天荒な若造たち、ということだから。そういった点では「ティファニーで朝食を」と同じであるが、どうも、そこに製作者ドロンの何かしらの商魂を感じるのはうがった見方というものだろうか。
ただ、映画としては何も考えず、当時の俺様は大スターという二人が伸び伸びと演じる姿にうっとりしながら見るには最適だろう。