地下室のメロディー – MELODIE EN SOUS-SOL(1963年)

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スタッフ

監督:アンリ・ヴェルヌイユ
脚本:アルベール・シモナン、ミッシェル・オーディアル
アンリ・ヴェルヌイユ
撮影:ルイ・パージュ
音楽:ミッシェル・マーニュ

キャスト

シャルル / ジャン・ギャバン
フランソワ / アラン・ドロン
ジネット / ヴィヴィアンヌ・ロマンス
ルイ / モーリス・ビロー
ブリジット / カルラ・マルリエール
バーテンダー / ジャン・カルメ
警察署長 / クロード・セヴァール
リリアンヌ / リタ・キャデラック
マルセル / アン・マリー・コフィネ

日本公開: 1963年
製作国: フランス シプラ・CCM作品
配給: 日本ヘラルド映画


あらすじとコメント

前回の「ヘッドライト」同様、ジャン・ギャバン主演にして、アンリ・ヴェルヌイユ監督作品。当時、爆発的人気を博していたアラン・ドロンと組んで作ったクールな犯罪映画の佳作。

フランス、パリ。5年の刑期を終え、釈放された老ギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)は、郊外にある家に戻った。だが、周りは再開発され無機質な団地が立ち並ぶ他、かつての住人は皆立ち退き、空き地だけが目立っていた。そんな場所で妻ジネット(ヴィヴィアンヌ・ロマンス)は、何ひとつ変えず、たったひとりで彼の帰りを待っていた。ジネットは彼が捕まる前に残しておいた金や立ち退き補償金があるので、余生を南仏で小さなホテルでも経営して過そうと言う。しかし、シャルルは貧乏人から安い金を搾り取って、細々と余生を送る気はないと断る。彼には最後にデカいヤマを踏んで、ひと儲けしようと思っていたのだ。

そんなシャルルはかつての仲間を訪ねるが、彼は持病が悪化し、歩くのもままならない状況だった。「俺は参加できないが、素晴らしい計画をお前にやる」そう言って一枚の図面をだした。それはカンヌにある賭博場の見取り図だった。儲けは10億フランという詳細を尋いて成功を確信したシャルルは、かつて刑務所で目を付けていた若者のフランシス(アラン・ドロン)に声を掛けた。出所後、母親のすねをかじって生きていたフランシスは、無条件に話に食いついてきた。

他に、もうひとり腕の確かなドライバーが必要だというシャルルにフランシスは・・・

クールでスタイリッシュな犯罪映画の佳作。

何よりもフランスのフィルム・ノワールの大御所ジャン・ギャバンが久々に得意のギャング役というホーム・グラウンドに戻ってきたことと、人気絶頂の二枚目アラン・ドロンが組んだことで絶妙な雰囲気が醸しだされた。

冒頭の再開発によって寂れた自宅での妻との会話に始まり、うらぶれたドロンと再会するバーや、修理工場といった静かで生活感溢れる庶民的な場所でそれぞれの人生の哀歓を漂わせてから、一挙に陽光きらめくカンヌへと転換していく鮮やかなリズム感。二人ともタキシードを着こなし、方やスポーツ・カー、方やロールス・ロイスといった高級車に乗り、プール・サイドでビキニの女性たちに囲まれる世界になる。しかし、それは金持ちが放蕩三昧するのではなく、カジノの売上げ強盗をするためなのだ。

パリとカンヌの違いを際立たせ、そのどちらにも佇んでも絵になる二人。当然、ギャバンには体の切れがないから、アクション関係はドロンが受け持つ。

実際、ドロンが強盗に入るシーンはどこかドキュメント・タッチで、観客がハラハラする実にメリハリの利いた展開だ。また、ラストのシーンは当時話題になった。

音楽も当時流行りだったモダン・ジャズの雰囲気を上手く生かしている。このテーマ曲は、最近、『ブラック無糖』とかいう缶コーヒーのCMで使われたのでご存知の方も多いかもしれない。

また、本作は白黒版とカラー版があり、どちらを見るかで印象がかなり異なる。DVDは未見なので知らないが、昔でていたビデオでは本編がカラー、おまけで入っている予告編は白黒とその異なる感じが楽しめた。

監督はアンリ・ヴェルヌイユ。昔ここで紹介した傑作「冬の猿」(1962)は、この前年、同監督によって作られた。興味深いのは両作ともジャン・ギャバンが主演し、当時若手として人気を二分していたジャン・ポール・ベルモンドとアラン・ドロンが各々共演していること。

しかも内容がまったく異なる。特にギャバンの設定は「冬の猿」では、妻とひっそり自分の殻に引きこもって生きる安ホテルの主人役。それを今回は、安ホテルの主人などで余生を送りたくないと妻に言い放ち、最後の大仕事に賭けるギャング。面白い設定だ。

日本公開はかなり前後したが、現在はDVDで両作とも再見できるので見比べるのも一興かと思う。

本作は、昨今、妙に減ったクールなアクション映画で、いかにもののフランス映画としてその雰囲気に酔えるだろう。

余談雑談 2007年12月22日
数多くの作品を配給してきたUIPが年内で解散し、またひとつ、東京の銀座から洋画系配給会社が消える。 昔は、映画配給会社は銀座に集中していて、映画評論家やライターたちは徒歩で各試写室をハシゴしていた。しかし、現在、その拠点は20世紀フォックス