東京ではあちらこちらで区内循環バスなるものが増えている。ひたすら裏通りを細かく走るマイクロバスだ。
自分が住む区にもある。ただ、大きく円を描くように走るため、行きは良いが、帰りはグルリと一周しなければならないので面倒。しかし、100円という料金には魅力がある。
先立て、そのバスでアンケート調査があった。使用頻度とか、通勤か、観光目的の利用か、とかだ。そこで、ふと困った。自分がそのバスを利用するのは、いつもの気の効いた飲み屋に行くためだからだ。しかも、心憎いことにバス停の多くは、路地裏にある行きつけの店の近くにある。
当然、使用目的に「飲酒のため」という項目はない。『その他』にマルをつけた。しかし、横にカッコの欄があり、具体的に、と書いてある。
思わず窓の外に眼をやった。陽が伸びたおかげで、まだ明るい町並みを見ながら、守秘義務という言葉が浮かんだ。