スタッフ
監督:ジョン・スタージェス
製作:ジョン・スタージェス
脚本:エドワード・アンホルト
撮影:ルシアン・バラード
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
ワイアット / ジェームス・ガーナー
ドク / ジェーソン・ロバーズ
クラントン / ロバート・ライアン
バージル / フランク・コンヴァース
モーガン / サム・メルヴィル
スティルウェル / ロバート・フィリップス
スパイサー判事 / ウィリアム・シャラート
マクマスター / モンテ・マーカム
ブロシアス / ジョン・ヴォイド
日本公開: 1967年
製作国: アメリカ ミリッシュ&キャパ・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
前回の主役ジェームス・ガーナー。個人的には中々器用な役者だと思っている。そんな彼が有名な保安官を演じた渋い西部劇の佳作。
アメリカ、アリゾナのトゥームストーン。1881年10月26日の午前11時。歴史に名を残す『OK牧場の決闘』が行われた。保安官ワイアット・アープ(ジェームス・ガーナー)、ドク・ホリディ(ジェーソン・ロバーズ)、そしてワイアットの兄弟二人に対して、牧場主クラントン(ロバート・ライアン)ら六人。決闘は数十秒で終わった。しかし、クラントン自身は決闘に参加せず逃げた。
後日、クラントンの息のかかったコチーズ郡の保安官がワイアットたちを殺人罪で告訴した。裁判が開かれ、クラントンたちはだまし討ちにあったと主張したが、医師の検証でワイアットたちの無罪が確定する。面白くないクラントンは警察署長選挙に立候補したワイアットの兄バージルを闇討ちし重傷を負わせる。更に、バージルに代わって立候補した弟のモーガンまでを襲う。
遂に堪忍袋の緒が切れたワイアットは復習の鬼と化し、私怨を晴らすため、逃げるクラントンを追いかけ始める・・・
西部史上、最も有名な決闘を史実に基づいて映画化した異色作。
ジョン・フォード監督の詩情溢れる名作「荒野の決闘」(1946)から、本作のジョン・スタージェスが撮った「OK牧場の決闘」(1957)など、何度も映画化され、アメリカ人だったら誰もが知っている実話。
本作までは、その決闘が最大のクライマックスとして描かれてきた。それを史実に近付けて映画化した。異色中の異色と呼べる。何せ、いきなりOK牧場の決闘から始まるのだ。
そして、正義の味方として語り継がれてきた歴史上、一番有名な保安官もただの人であり、私情に流され、私怨から宿敵を追詰めていく人間として描いていく。
完全に今までの映画と一線を画した作劇に驚いた。人間味に溢れ、心優しい男として描いた「荒野の決闘」。そして、正統派、どちらかというと浪花節的な「OK牧場の決闘」。どちらも好きな作品である。しかし、そのどちらとも違う人物像。
しかも「OK牧場の決闘」を作った監督が、同じ題材をまったく異なる視点から描く。このことにも驚いた。確かに本作以前にレオ・マッケリーやヒッチコックといった監督が自身でリメイクした作品もある。しかし、ここまでタッチを変えたのは初めてだろう。驚いて見入った記憶がある。
主役のワイアットを演じるジェームス・ガーナーの燃える怨念を内に秘め、常に冷静さを保つ演技に唸ったし、敵役のクラントンを演じたロバート・ライアンもハッタリの渋さと脆弱さを滲ませて、まさに適役。
しかし、本作で何といっても一番印象に残るのはワイアットの親友ドク・ホリディを演じたジェーソン・ロバーズだ。いぶし銀の魅力とはまさにこれ、という名演で圧倒する。事実、他の二作品のドク役よりも、一番好きだ。ちなみにドク役は「荒野の決闘」ではヴィクター・マチュア、「OK牧場の決闘」ではカーク・ダグラスが演じている。
製作されたのは、アメリカン・ニュー・シネマが台頭し始まったころ。確かに単純明快で勧善懲悪といった西部劇が激減していった時期である。しかもそういった異色作を老練なスタージェス監督が撮ったことに、当時の西部劇ファンは皆驚いた。しかし、本作をけなした評論家は少なかったと記憶している。それは、異色でありながら、映画を知り尽くした監督による正統派の流れを感じ取ったからだろう。
派手なガン・ファイトから始まり、静かな終焉を迎える。傑作とは呼べないと思うが、万感迫るものが残る映画。しかし、舞台が『トゥームストーン(TOMBSTONE)』とはいえ、そのまま邦題に『墓石』はないだろうと思っている。