スタッフ
監督:バート・ケネディ
製作:ロナルド・ゴ-ルドスタイン
脚本:ロナルド・M・コーヘン、デニス・シュライアック
撮影:ハリー・ストラッドリングjr
音楽:ウィリアム・ラヴァ
キャスト
フラッグ / ロバート・ミッチャム
マッケイ / ジョージ・ケネディ
ワコ / デヴィッド・キャラダイン
ウィルカー町長 / マーティン・バルサム
カーメル / テイナ・ルイーズ
グランディ / ダグラス・V・フォウリー
デュース / ジョン・ディヴス・チャンドラー
ディッカー / ジョン・キャラダイン
ボイル / ディック・ピーボディ
日本公開: 1970年
製作国: アメリカ R・ゴールドスタイン・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
前回の「夕陽に立つ保安官」の監督でマイ・フェイヴァリットのひとりバート・ケネディ。そんな彼がコメディと正統派を両立させたB級西部劇の隠れたる佳作。
20世紀初頭、馬の代わりに自動車が走り始めていたころのアメリカ西部の小さな町プログレス。ゴールド・ラッシュや開拓時代は終わり、20年も保安官を勤めたフラッグ(ロバート・ミッチャム)も、時代に取り残され、いまや心許せるのは丘の上でひとり暮らす年老いたグランディ(ダグラス・V・フォウリー)だけだった。
そんなグランディが、人相の悪い一団が通過するのを見たと言ってきた。その中にひとりはマッケイ(ジョージ・ケネディ)と呼ばれていたと告げると、フラッグは形相を変えた。15年前逮捕したが脱獄され、以後行方不明になったきりの大悪党だ。今度の土曜に大金を積んだ汽車が来るので、奴らはそれを狙っているに違いないと踏んだ。すぐさま気弱な保安官助手ボイル(ディック・ピーボディ)に命じて自警団を募らせた。驚いたのは町長のウィルカー(マーティン・バルサム)だ。こんな時代に、そんな大騒ぎを起こされてはたまったものではない。慌てて年金と金時計をフラッグに押し付け、強制的に引退させてしまう。
憮然としたフラッグは、単身マッケイの一団に近づいたが、一団の首領は若いワコ(デヴィット・キャラダイン)で、逆に捕まってしまう。
そしてワコはマッケイに彼を殺すように命ずるが・・・
終焉を迎えようとしていた西部劇にオマージュを捧げた好編。
本作が作られたころはヴェトナム戦争の真っ只中で、アメリカン・ニュー・シネマが台頭していた時期。定石通りのハリウッド・スタイルは忌み嫌われ、単純に先住民が悪役で、開拓民が正義という西部劇は絶滅していた。
だが若者たちがニュー・シネマに心酔する一方で、中年以降の男たちは失われていくフロンティア・スピリッツに郷愁を感じていた。そういった初老の人間たちの心意気を西部劇というジャンルでタフガイが代弁し、活躍してくれる作品を作った。
本作での悪役は白人である若者たち。そして老獪な政治的野心を持つ町長。かといって、これぞ悪役という感じではない。皆、どこか抜けている。こういった設定にB級ティストが感じられる。
やはりミッチャムとケネディの主役二人がイイ。ミッチャムはずっと第一線で活躍してきた俳優。方やケネディは悪役ばかりにして脇役専門。しかし、ケネディは本作の一年前「暴力脱獄」(1967)でアカデミー助演男優賞を受賞し、やっと芽がでたころ。この二人の東映仁侠映画的友情がメインだ。実に両者とも、肩の力が抜けた感じで、嬉々としてタフガイを演じているのに好感を持った。
脇も中々、通好みだ。町長を演じるマーティン・バルサムもアカデミー助演賞を受けたヴェテランだし、名作「駅馬車」(1939)から活躍していた往年の西部劇ファンの間では知らない人はいなかったジョン・キャラダイン。その息子デヴィッド・キャラダインも出演し、親子共演を果たしている。
本作は黄昏行くジャンルである娯楽西部劇に近代化と若者たちのいびつな正論に対してのアンチテーゼとして作られたと信じている。
オジサンたちの心意気を描く前半から、サイレント映画特有だったスラプスティックな機関車と自動車による「追っかけ」という派手な山場を迎えるラストまで、昔は良かったぞ的作劇で心和んだ。
ただ、こういった展開や硬軟併せ持つ映画は、現代では好き嫌いが分かれるとも思うが。