スタッフ
監督:バート・ケネディ
製作:ビル・フィネガン
脚本:ジェームス・エドワード・グランド
撮影:ハリー・ストラッドリングjr
音楽:ジャック・エリオット
キャスト
ラティゴ / ジェームス・ガーナー
ペイシェンス / スザンヌ・プレシェット
ジャグ / ジャック・イーラム
ジェニー / ジョーン・ブロンデル
バートン / ハリー・モーガン
ゴールディ / マリー・ウィンザー
エームズ大佐 / ジョン・デナー
スウィフティ / チャック・コナーズ
シュルツ医師 / ダブ・テイラー
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ チェロキー&ブリゲード・プロ作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
引き続きバート・ケネディ。主役はジェームス・ガーナー。と来れば、当然、B級西部劇コメディだ。
アメリカ、デンヴァー。酔った勢いで色気ムンムンのゴールディと婚約したラティゴ(ジェームス・ガーナー)は一夜明け、後悔から、そっと婚前旅行中の列車から降りた。
彼が降り立ったのはバーガトリーという田舎町。ところが、彼の面前でダイナマイトが爆発し、銃声が響いた。何と、騒ぎの張本人はペイシャンス(スザンヌ・プレシェット)という娘。彼女はこんな田舎からでて、ニュー・ヨークに行きたいと駄々をこねていたのだ。触らぬ神に祟りなし、とばかりにホテルに入るラティゴ。すると、町の有力者バートン(ハリー・モーガン)親子や駅長がやって来て、しげしげと彼に見入った。
この町は、どこかに金脈があり、それを狙ってバートンたちとエームズ大佐(ジョン・デナー)のグループが対峙していたのだ。エームズ大佐側が名うてのガンマン、スウィフティを呼んでいるという情報を得て、彼をチェックしに来たのだった。ところがこのラティゴという男、ヌボーッとしていて、まったく掴みどころがなく、強いのか弱いのか判断しかねた。
やがて、状況を知ったラティゴは5000ドルでバートン側に寝返ると告げる。喜ぶバートンたち。しかし、彼は町で拾った飲んだくれで薄汚いジャグ(ジャック・イーラム)を丸め込み、彼こそ本当のスウィフティだと告げた。そして自分は有能なる彼のマネージャーだと誇らしげに答えた。
これで鬼に金棒だとばかり一気にエームズ大佐に決戦を仕掛けようとするが、バートンの娘のペイシャンスがヘンにラティゴを気に入って・・・
爆笑B級西部劇の知られざる佳作。
監督バート・ケネディ。出演はジェームス・ガーナーにジャック・イーラムとハリー・モーガン。そう前々回に紹介した「夕陽に立つ保安官」と同じメンバーだ。つまりは姉妹編とも呼べよう。
そして今回もやらかしてくれるのだ。ガーナーは強いのか弱いのか解らないが、口は立つ主人公。まったく同じ役柄だ。彼に丸め込まれて利用される少々、オツムの弱い暴れ者がジャック・イーラム。これも同じ。だから、「夕陽に立つ保安官」を見ていれば、流れが読めるというもの。
そこへ持ってきて、小さな町で対峙する二つの強欲グループ。これって、まさに黒沢明の「用心棒」(1961)だ。しかも、イタリアが「荒野の用心棒」(1964)でパクッたパクらないで大騒ぎした設定そのもの。それを同じ西部劇というスタイルでアメリカがパクる。おちょくっているのかと笑ってしまった。
内容も爆笑に次ぐ爆笑の連続。すぐにダイナマイトでことを片付けようとする娘。しかも名前はペイシャンス、「忍耐」である。更にはガーナーとイーラムの迷コンビに翻弄される両グループの間抜けさ加減も面白い。
そういった内容に、往年のアメリカ製西部劇のパロディまでをも詰め込んで、これでもかと押してくる。その徹底振りたるや、こちらの唾飲が下がったほど。
映画は後半、ホンモノのガンマンが登場してくるのに併せ、爆笑度が最高潮に盛り上がる。演じるのはTVシリーズ「ライフルマン」で活躍したチャック・コナーズ。当時、マカロニ・ウエスタンにも出演していたイカつい大男。しかも名作「シェーン」(1953)の敵役ジャック・パランスを髣髴とさせる黒ずくめの衣装で登場だ。なるほど適役かと、思いきや、そこはコメディ。劇場は爆笑の渦だった。
前回扱った「悪党谷の二人」(1969)では、アメリカン・ニュー・シネマに押されていた西部劇の凋落振りを逆手に取ったが、今回は当時世界を席巻していたイタリア製のマカロニ・ウエスタンに対抗しようとしている。
今だったら、元気な黒人か、いかにものコメディアンで作りそうな題材を、西部劇の巨匠ジョン・フォードを継ぐ者として持て囃されたバート・ケネディが作るのだ。しっかりとした西部劇のセオリーを理解した上で壊していく作劇には快哉を叫びたくなった。ただし、正統派西部劇ファンは怒るだろうなと思いつつ。
日本ではビデオもDVDも発売されていないが、アメリカでは「夕陽に立つ保安官」と本作のカップリングでDVDがでている。日本でも、このスタイルで発売してくれないかなと願っているのだが。
それにしても、本作が製作された当時はB級映画の佳作が、やけに多かったなと妙に感慨に浸っている。