スタッフ
監督:ドン・シーゲル
製作:ドン・シーゲル
脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リースナー
撮影:マイケル・バトラー
音楽:ラロ・シフリン
キャスト
ヴァーリック / ウォルター・マッソー
モリー / ジョー・ドン・ベイカー
シビル / フェリシア・ファー
ハーマン / アンディ・ロビンソン
ボイル / ジョン・ヴァーノン
ジュエル / シェリー・ノース
ガーフィンクル / ノーマン・フェル
オネスト・ジョン / ベン・ファン
ヤング / ウッドロード・バーフリー
日本公開: 1974年
製作国: アメリカ ユニヴァーサル作品
配給: CIC
あらすじとコメント
とぼけていて、どこかチャーミングな主人公。舞台は西部劇の時代から変わって現代のアメリカ。どこかB級ティスト溢れる面白いアクション。
アメリカ西部、ニュー・メキシコの田舎町。ヴァーリック(ウォルター・マッソー)が、若い妻とハーマン(アンディ・ロビンソン)らの四人で、小さな銀行を襲った。首領のヴァーリックは、田舎の小さな銀行で1万ドル程度の強盗を働いても、警察の追及がさほど厳しくないと知っていて、手口や場所を変えながら、強盗を繰り返していた。
ところが今回は違った。警察と撃ち合いになり、警官や警備員、仲間のひとりが死亡し、妻までが重傷を負ってしまう。何とか逃げだしたヴァーリックたちは、もはや助かる見込みのない妻の乗った車を炎上させ、隠れ家に戻った。そこで奪った金の入ったバッグを開け驚愕。何と、75万ドルもあったのだ。
あんな田舎の銀行に大金があるはずがない。マズイ、これはマフィアの金だ。そう直感するヴァーリック。警察と違い、奴らは情け容赦ない。彼は金を返そうとするが、ハーマンが遮った。「これだけあればケチな強盗にはオサラバできる」続いて、ヴァーリックが表向きの職業としている農薬散布用の小型複葉機でメキシコへ逃げれば問題ない、と。
一方、表向きは銀行協会の会長だが、実はマフィアのボスであるボイル(ジョン・バーノン)は、早速強奪された金を奪い返すべく、殺し屋のモリー(ジョー・ドン・ベイカー)を呼び寄せた・・・
アイデア勝利の良く出来た犯罪アクション。
何といっても主役を演じたウォルター・マッソーの存在なしには考えられない作品。悪役から二枚目のプレーボーイまで演じ分ける芸域の広さ。そしてどんな役柄にも共通するのが、どこかとぼけているという点。
「おかしな二人」(1968)などのコメディから、「シャレード」(1963)での謎の大使館職員、「蜃気楼」(1965)のしがない探偵、更にはB級映画の傑作「サブウェイ・パニック」(1974)の地下鉄警察官まで、そのどれもが彼でないと成立しなかったであろう作品群ばかり。
当然、本作でもその存在感バツグンの演技で他を圧倒している。薄らトボケているが、頭の回転は異様に早いし、切れる。だからこそマフィア相手に、丁々発止の駆け引きを展開していけるのだ。また、本作での設定の妙は、彼が元曲芸飛行士で小型複葉機を操ることができるという点。
長年映画を見ていると、農薬散布用などの小型複葉機がでてくる作品には面白いものが多いと感じている。ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」(1959)、コメディ・パニック映画の快作「大陸横断超特急」(1976)、ピーター・ハイアムズの傑作「カプリコン1」(1977)など、どれも物語の本筋よりも印象に残るものばかりだ。今回も面白い使い方ででてくる。
また、この当時のB級アクションの常連が多く登場するのも見逃せない。マフィアの首領役ジョン・バーノン、偽造パスポート屋で、はすっぱで色気ムンムンのシェリー・ノース。他にもフェリシア・ファーやヴェテランのノーマン・フェルなど。
しかし、脇で一番光っているのは、殺し屋役のジョー・ドン・ベイカーだろう。体がデカく、南部人特有の偏見に満ち、どこか単細胞で、いかにも悪そうな印象。
監督はクリント・イーストウッドが心酔していたドン・シーゲル。無骨でアウトロー的主人公が活躍するアクションが得意の監督だ。監督は本作の直前に「ダーティー・ハリー」(1972)を撮っている。まさに脂が乗りきっていた時期だ。
いかにもB級ティスト溢れる設定と豪快なアクションが結合した作品。スタッフ、キャストなどヴェテラン勢の余裕すら感じられる快作である。