スタッフ
監督:スチュワート・ベアード
製作:ジョエル・シルヴァー
脚本:ジム&ジョン・トーマス
撮影:アレックス・トムソン
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
キャスト
グラント / カート・ラッセル
トラヴィス大佐 / スティーヴン・セガール
ジーン / ハル・ベリー
ラット / ジョン・レグイザモ
ケイヒル / オリヴァー・プラット
キャピー / ジョー・モートン
ハッサン / デヴィッド・スーシェ
ローイ/ B・D・ウォン
マプロス上院議員/ J・T・ウォルシュ
日本公開: 1996年
製作国: アメリカ 作品
配給: ワーナー・ブラザース
あらすじとコメント
複葉機、ハング・グライダーと空の乗り物が続いた。今回は横綱、ジェット旅客機の登場。CGの発達で多作されたが、その中で好きな作品にしてみた。
アメリカ、ワシントンDC。陸軍情報部顧問のグラント博士(カート・ラッセル)がパーティ会場から緊急召集された。ワシントンに向かっている747型ジャンボ・ジェット機がハイジャックされたというのだ。犯人たちの要求は先日イギリスで逮捕されたテロ・グループの首領の解放だった。
しかし、グラントは3ヶ月前に奪還に失敗した猛毒ガスOZ-5を使用したワシントン攻撃ではないかと推論を立てる。途端に顔色を変えたのは同席していたテロ対策特殊部隊を率いるトラヴィス大佐(スティーヴン・セガール)。彼こそ猛毒ガス奪還に失敗した本人だったからだ。しかも、その作戦を立案したのがグラントだったことから私怨を持っていたのだ。
400名の乗員乗客を乗せた機のワシントンへの到着時間は刻一刻と迫っている。最善策を見いだせず、混沌とする会議場でトラヴィス大佐がある提案をする。実験段階だが、小型輸送機でジャンボ機に空中ドッキングし、精鋭部隊を移乗させて制圧するというのだ。驚く一同だったが、犯人たちと交渉を続けながら、大きな賭けではあるが実行することを決定。すでに部下たちを待機させているという大佐は、実戦経験のまったくないグラントにも参加を半ば強制的に要請する。
すぐさま基地に向かったグラントを失笑で迎える隊員たち。なぜなら彼はタキシード姿だったからだ。憮然とするグラントは隊員たちの他に、輸送機を設計した技師ケイヒル(オリヴァー・ブラット)を見つける。彼も当然、実戦経験などない。
不安要素を抱えながら、輸送機は出発するが・・・
奇想天外な設定でコメディ色を含めながら正面突破を狙った娯楽作。
先ず、精鋭部隊が毒ガス奪還に失敗し、イスラム教のテロ・グループがロンドンで自爆テロを決行し、リーダーが逮捕されるという展開をスピーディに綴っていく。
中々、正統派でサスペンス溢れる展開だと思っていたら、主役のカート・ラッセルが登場してから途端に変調する。理論型エリートだが、どこか抜けているということを強調させるのだ。そもそもタキシードで活躍させようとするなど、劇中の台詞でも登場するが、ジェームス・ボンドかとツッコミを入れたくなる。そんな彼らが空中ドッキングで乗り移るという展開に至っては、ニコニコしてしまった。
さらにそこである意味、本作最大のヤマ場が登場してくる。あまりにも唐突な展開で、完全なるコメディ映画かと仰天して、イスから転げ落ちそうになったほどだ。
しかし、以後は実にサスペンスフルな展開になる。そんな中でも、「ダイハード」シリーズや「サブウェイ・パニック」(1974)など、かつて、どこかで見たことがある設定が映画ファンの興味をくすぐって思わず微笑むシーンもあり、硬軟取り混ぜた進行で素直に楽しめた。また、この手の映画の美味しい所取りをして、徹底的に娯楽作として作っている作劇にも好印象。
ハル・ベリー演じる客室乗務員や、いかにものキャラ分けした特攻隊員たち、次期副大統領候補の上院議員や航空保安官など、個性際立つキャラを演じる出演陣も好演していると感じた。
ただ、本作製作後に、実際に起きた9・11テロを想起させる設定にして展開でもあるので、テロ後、見直したときに複雑な気持ちに陥った。更にテロそのものを扱った「ユナイテッド93」(2006)を見たとき、本作とイメージがダブってしまい困惑した。
様々な要素が盛り込まれた面白い娯楽作ではあるのだが、今見ると複雑な心境で見ざるを得ない作品でもある。