スタッフ
監督:ジョージ・シートン
製作:ロス・ハンター
脚本:ジョージ・シートン
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:アルフレッド・ニューマン
キャスト
ベイカーズフェルド / バート・ランカスター
デマレスト / ディーン・マーティン
タニア / ジーン・セバーグ
グエン / ジャクリーン・ビセット
パトローニ / ジョージ・ケネディ
クオンセット婦人 / ヘレン・ヘイズ
ゲレロ / ヴァン・へフリン
イネス / モーリン・ステンプルトン
ハリス / バリー・ネルソン
日本公開: 1970年
製作国: アメリカ R・ハンター・プロ作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
今回も航空パニックもの。数ある作品の中でも傑作であり、また、ある意味ハリウッド映画の歴史を変えた力作でもある。
アメリカ中西部、リンカーン国際空港。折からの吹雪で空港は混乱の極みだった。
そんな中、着陸した機が雪に脚を取られ、滑走路から脱輪してしまう。空港長ベイカーズフェルド(バート・ランカスター) は、急遽メイン滑走路を閉鎖し、予備滑走路を開いた。しかし、その滑走路は住宅街のすぐ近くにあり、住民たちがすぐに空港に苦情にやってくる。続いて空港役員が住民感情を考慮し、即刻予備滑走路の閉鎖を命令。それが出来なければ降格させると付け加えた。
ベイカーズフェルドはそういった状況に苦慮しながらも、メイン滑走路を再開させるべく、整備主任のパトローニ(ジョージ・ケネディ)を呼び戻して対応に当たらせる。そんな状況とは露知らず、彼の妻は仕事優先の亭主に愛想を尽かし、今夜の社交界のパーティをドタキャンしたことを責め立てに空港までやってくる。また、ベイカーズフェルドの妹の旦那だが、犬猿の仲のパイロットのデマレスト(ディーン・マーティン)がフライトのため空港にやって来て、設備の老朽化を指摘。更に、そういうときに限って日頃以上に、密輸人や無賃フライト常習の老婆(ヘレン・ヘイズ)など、次から次へと問題が連鎖的に起きていく。
何とかすべてに善処しようとしている最中、借金まみれで精神を病んでいるゲレロ(ヴァン・ヘフリン)がダイナマイトを持って、デマレストが操縦する機に乗り込んでしまって・・・
多くの人間が行き交う空港で起きる一晩の出来事を描く巨編。
当時、テレビと低予算のアメリカン・ニュー・シネマに押され、もはや過去の遺物といわれていたスタジオ主義のハリウッド映画。そんな時代に起死回生を図った作品である。
オールスター・キャストで実力派のヴェテラン・スタッフを揃え、映画化不可能と思われていたベストセラー小説を十二分な予算で映画化した。そして、結果、ハリウッドは見事に復活したのだ。
以後「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)や「大地震」(1974)など、パニック映画と呼ばれる一大スペクタクル巨編が連作され、本作もシリーズ化された。
その流れの作った原点的作品である。様々な問題を抱えた人間たちが一箇所に集約されるグランドホテル形式でドラマは進行して行く。家庭崩壊、不倫、妊娠、神経衰弱。そういった一筋縄ではいかない人生を背負った人間たちが複雑に絡まっていく。
当初は空港内で起きる難事に対応していく空港長をメインにストーリィは進行し、やがて、それこそホンモノの爆弾を抱えたジェット機内でのサスペンス溢れるストーリィが絡んでくる。
何よりも数多い登場人物を混乱せず、かつ個性を際立たせさばいていく、脚本も書き演出したジョージ・シートンの手腕が見事。作劇自体はオーソドックスであるが、それが妙な安定感を醸しだしている。
そして見逃せないのが、アカデミー賞受賞者が集結していること。いかにハリウッドがこの映画に賭けていたかが推察できる。
監督のシートンも2度受賞し、主役のバート・ランカスターを筆頭に、無賃常習の老婆を演じたヘレン・ヘイズ、整備主任を演じたジョージ・ケネディ。スタッフでは、撮影のアーネスト・ラズロと衣装のイーディス・ヘッドが7回、これが遺作になった音楽のアルフレッド・ニューマンにいたっては9回も受賞しているという豪華な布陣。
そういったメンツがそれぞれのパートを理解し、ベストを尽くしたことによって、見事なるアンサンブルが生まれ、一大交響楽の趣の娯楽作に仕上がった。
しかし、個人的には、否や、本作を見た多くの人々が賛同してくれると思うが、何といっても整備主任を演じたジョージ・ケネディの格好良さが一番印象に残る。常に葉巻を咥え、冷静に、そして時には熱く、と頼れるタフガイ振りを存分に発揮している。その証拠に、以後三本連作されたシリーズ作品すべてに同じ役名で出演している。
一時期はパニック映画といえばジョージ・ケネディと呼ばれ、一部の映画雀の間では登場人物の多くが死んでしまうパニック映画では、彼が出演していないからだとまことしやかに話されたほど。それほど強烈な印象を残す。
CG技術が発達した現在では、いささかチャチさを感じるかもしれないが、真にハリウッドを蘇らせた巨編であることは間違いない力作である。