狼たちの影 – THE HUMAN FACTOR(1975年)

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スタッフ

監督:エドワード・ドミトリク
製作:テリー・レンズ
脚本:トム・ハンター、ピーター・ハウエル
撮影:クーサマ・ラウィ
音楽:エンニオ・モリコーネ

キャスト

キンズデール / ジョージ・ケネディ
マカラスター / ジョン・ミルズ
ルーポ警部 / ラフ・ヴァローネ
エドモンズ / バリー・サリヴァン
フラン / リタ・トゥシンハム
テイラー / トム・ハンター
ピジョン / ハイディー・ポリトフ
CIAエージェント / シェーン・リマー
ファラー将軍 / アーサー・フランツ

日本公開: 1977年
製作国: アメリカ F・アヴィアンカ・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

前回の「大空港」で圧倒的な存在感を見せたジョージ・ケネディ。出演作は数多いが、主演作となると意外なほど少ない。そんな彼の主演作の一本にしてみた。

イタリア、ナポリ。NATO軍基地に勤務するコンピューター技師キンズデール(ジョージ・ケネディ)は、同僚の技師マカラスター(ジョン・ミルズ)と共同で、相手から攻撃を受けたときに反撃する『即応式対敵報復プログラム』を開発した。

そんな彼が息子の誕生日プレゼントを抱えて帰宅すると、妻と子供三人全員が何者かに惨殺されていた。ナポリ警察のルーポ警部(ラフ・ヴァローネ)が担当になるが、犯人の目的も真意も解らず、やがてCIAも動きだす。キンズデールはこのままでは埒が明かぬとマカラスターや助手フラン(リタ・トゥシンハム)の協力を得て、密かにコンピューター・システムを駆使し、犯人を割りだしにかかる。

そんな中、第二の惨劇が起きてしまう。それはアメリカ大使館員の家族だった。キンズデールはCIA職員の振りをして、情報を得ようと被害者の大使館員に近付く。結果、犯人たちはパレスチナ・ゲリラで仲間の釈放と現金400万ドルを要求していると知る。更に要求が受け入れられなければ、24時間毎にアメリカ人家族を殺戮していくという。

集めた情報を鬼の形相でシステムに入力するキンズデール。マカラスターはそんな彼の態度からゲリラたちに復讐しようとしていることを察知し、何とか思い止まらせようと、彼の前でコンピューターを操作する。

そこには報復成功確立は8パーセント、というデータがでていた・・・

家族を惨殺され、私怨を果たそうとする男の復讐劇。

当時、今ほど浸透していなかったコンピューター・システムを駆使して情報を得るという着眼点は面白い。

ただ、今再見すると、やはり首を傾げたくなる部分も多い。着想は面白いのだが、進行過程で様々に膨らませれば面白くなりそうな伏線をいとも簡単に捨てているという消化不良な部分も散見でき、そういった点がどうにもB級のティストを感じさせる。

それは主役がジョージ・ケネディであり、舞台がイタリアのナポリというのも、どうにも大雑把なマカロニ・アクション的な感じがしてしまうからだろう。そもそも2メートル近い巨漢で、どこかでくの棒的、表現が悪ければ、「朴訥」としたケネディが有能なソフト開発者に見えるはずがないのだ。

しかし大好きなバイプレイヤーであるので、そこは好意的に目を瞑る。そんな彼が走り、銃をぶっ放し、アクションをこなす。大ファンとしては嬉しくてニコニコしながら見ていた記憶がある。

デビュー当時は目立たぬ端役から、印象的な悪役となり、「暴力脱獄」(1967)で見事、主役のポール・ニューマンを喰ってアカデミー助演男優賞を勝ち取った男である。その彼が堂々の主役を張った映画だ。確かに本作以前「新・荒野の七人 馬上の決闘」(1968)で主役を演じたが、あくまでもユル・ブリンナーの代役であった。

そんな彼の一枚看板である。当時、心底、贔屓目で見た記憶がある。

今回ここで扱うので再見しようと、以前、日本で「電子の復讐者」というヘンなタイトルでビデオがでていたので探したが、どこにもなく、結局、輸入盤のDVDを購入して再見した。結果、その展開はナシだろうとか、いかにもスタントマンを使っているなとか、真面目に作っているのにコメディかとツッコミを入れながらも、やはり嬉しく、どこか微笑ましく見てしまった。

脇役陣も盛りを過ぎたメンツばかりだが、それでも自分好みだ。大好きな大好きなイギリス製戦争映画の傑作「恐怖の砂」(1958)の主役ジョン・ミルズに、イタリアの無骨な色男ラフ・ヴァローネ。そして50年代からB級映画で活躍していたバリー・サリヴァン。

監督は「蜃気楼」(1965)でケネディを使ったエドワード・ドミトリク。有名な傑作はほとんどないが、「ワーロック」(1959)や「アンツィオ大作戦」(1968)など、個人的には好きな作品を作っている監督だ。

そんなヴェテラン勢が作ったB級ティスト溢れる作品。特にラストなどは、誰も近づけないゴジラのような感じで、なるほど、これぞジョージ・ケネディと感じさせてくれる。

当時としては最新式コンピューター・システムという奇を衒った設定だが、最後は1950年代の何も考えずに安心して見ていられる単純なアクション活劇になる不思議な作品。

だが、嫌いではない。

余談雑談 2008年5月31日
映画監督のシドニー・ポラックが鬼籍に入った。 どちらかというとアメリカ・ニュー・シネマの流れから、シニカルな視点で人間を描くという作風が多く、役者ではロバート・レッドフォードと多く組んでいた印象が強い。後年は監督よりもプロデューサーや役者と