スタッフ
監督: ジョン・フランケンハイマー
製作: フランク・マンキューソ Jr
脚本: J・D・サイクス、リチャード・ウェイス
撮影: ロバート・フレース
音楽: エリア・クミラル
キャスト
サム / ロバート・デ・ニーロ
ヴァンサン / ジャン・レノ
ディエドラ / ナターシャ・マケルホーン
グレゴール / ステラン・スカルスゲールド
スペンス / ショーン・ビーン
ラリー / スキップ・サダス
シーマス / ジョナサン・プライス
ミキ / フェオドール・アトキン
ナターシャ / カタリーナ・ピット
日本公開: 1999年
製作国: アメリカ ユナイト作品
配給: UIP
あらすじとコメント
引き続きロバート・デ・ニーロ主演作。現代を代表するスターであるが、やり過ぎるときもあり、イマイチ好きになれないのだが、そんな中で好きな作品。
フランス、パリ。裏町のとあるバーに次々と不審な男たちが集まってきた。それぞれ、面識はないようだが、誰もがお互いに同じ匂いを嗅いでいた。店員のディエドラ(ナターシャ・マケルホーン)が合図すると男たちは車に乗り込み、ある倉庫へと運ばれた。
フランス語を流暢に話すが、アメリカ人らしいサム(ロバート・デ・ニーロ)、生粋のフランス人ヴァンサン(ジャン・レノ)、ロシア人グレゴール(ステラン・スカルスゲート)ら5人だ。彼らは元CIAやKGBといったスパイの成れの果てや、過激派分子たちだった。だが、それぞれが得意とする分野のプロとして誇りを持っていた。
ディエドラは自分はボスのメッセンジャーだが、絶対権限を委譲されていると言い、彼らにミッションを告げた。それは厳重にボディガードに警護された男からスーツケースを奪え、という内容だった。相手が誰で、中身が何かなどの問いには一切答えないと冷徹に笑うディエドラ。そして、各プロが必要な器材や経費などを要求し、実行に向け行動を起こすように命じる。
そのとき、サムが手を挙げた・・・
フランケンハイマー監督が最後に輝いた骨太にして哀愁漂う佳作。
裏社会のプロが集まり犯罪を実行する。今まで山のようにあった設定である。しかし、リアルに作ってはあっても、本当か、と首を傾げる映画も多かった。
それを本作では、とてもリアルに、そして説得力を持って描いた作風にニンマリした記憶がある。
例えば、冒頭、主役が集合場所のバーに入る前に、裏口の有無、万が一の場合の脱出経路、そして、所持した武器を持ち込まず、どこに隠せばいざというときに取りだしやすいかを決めてから入店する。
他にも、立案段階で「待伏せしよう」とひとりが訳知り顔で言ったときの検証の仕方など、妙にリアルで好感が持て、なるほど、これがプロの発想かと唸った。
「RONIN」というタイトルは日本語の「浪人」のことである。つまり、かつての日本の武士たちを指していて、劇中その説明があるが、日本人としてはいささか疑問符が付く。だが、裏社会というか、その筋ならではのリアル感たっぷりの展開には唾飲が下がった。ゆえに妙なアンバランス感があるのも事実。
また、面白いと感じたのは、脚本を書いたリチャード・ウェイスがヒッチコックに影響を受けた設定にしていること。
それは『マクガフィン』である。彼らが必死になって奪おうとするものが、書類なのか、マイクロチップなのか、一体何であるかが一切、明かされないままで映画が終わる。
ゆえに消化不良になる人もでてくる。しかし、ヒッチは、監督に力量があれば、そのブツ自体が何であるかより、それにまつわるエピソードが面白ければ、その存在を忘れる、と。
更に、本作の脚本リチャード・ウェイスはデヴィッド・マメットの別名であるのだが、彼自身がジーン・ハックマン主演で「ザ・プロフェッショナル」(2001)として本作をリメイクしている。同じような設定で進行するが、監督の個性の違いが堪能できるので、見比べてみると面白いかもしれない。
贔屓目を承知でいうが、アクションのキレや、CGを嫌う力技で押し通したヴェテランの味に軍配をあげる。