デーヴ – DAVE(1983年)

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スタッフ

監督: アイヴァン・ライトマン
製作: ローレン・シューラー=ドナー
脚本: ゲーリー・ロス
撮影: アダム・グリーンバーグ
音楽: ジェームス・ニュートン・ハワード

キャスト

コーヴィック、ミッチェル(二役) / ケヴィン・クライン
エレン / シガニー・ウィーヴァー
アレクサンダー補佐官 / フランク・ランジェラ
リード報道官 / ケヴィン・ダン
デュエイン / ヴィング・レイムズ
ナンス副大統領 / ベン・キングスレー
マレー / チャールス・グローディン
アリス / フェイス・プリンス
ランディ / ローラ・リンレイ

日本公開: 1993年
製作国: アメリカ シューラー=ドナー・プロ作品
配給: ワーナー・ブラザース


あらすじとコメント

前回、デ・ニーロに一歩も引けをとらない演技を披露した大好きな俳優のひとりチャールス・グローディン。出番は少ないが、「ミッドナイト・ラン」同様、真面目なのに、どこか抜けた演技を披露した秀作。

アメリカ、ボルティモア。ささやかな仕事を斡旋する職業紹介所を営んでいるデーヴ・コーヴィック(ケヴィン・クライン)は、合衆国大統領ミッチェル(ケヴィン・クライン、二役)に、そっくりなことで、地元でも有名だった。彼は、気の良い友人マレー(チャールス・グローディン)に、何かと、多少、強引に仕事を頼み込む一方、ローカルCMやイヴェントで大統領のそっくりさん役のバイトをしていた。

そんなある日、自宅に屈強な男デュエイン(ヴィング・レイムズ)がやってくる。突然の不法侵入に驚くデーヴ。何と彼らは大統領付シークレット・サーヴィスだった。保安上の問題で、時々、大統領の影武者を使うという彼らは、デーヴに白羽の矢を立てたのだった。こんな自分でお役に立てるならと、喜んで務めると答えると、早速、代役を任されることになる。

豪華なホテルの一室へ呼ばれると、首席補佐官アレクサンダー(フランク・ランジェラ)や報道官リード(ケヴィン・ダン)らのチェックを受けた。「難しく考えるな。黙って手だけ振れば良い」そういわれ、ベストを尽くすと誓うデーヴ。続いて本物の大統領と対面する。しかし、ミッチェル大統領はイメージと違って、実に傲慢で嫌な男だった。それでも、嬉々としてお国のためにと頑張り、何とかこなして、帰路についた車内に連絡が入る。

大統領が秘書と浮気中に発作で倒れた、と・・・

古き良きアメリカ映画を踏襲したファンタジー映画の傑作。

古い映画ファンなら、ご存知かもしれないが、『アメリカの良心』といわれた名監督フランク・キャプラの世界の再現である。特に監督の名作のひとつ「スミス都へ行く」(1939)へのオマージュでもある。更に言えば、この初夏に『月9』で放映された木村拓哉主演の「CHANGE」は、完全に本作のパクリ、表現が悪ければインスパイアされたドラマである。

『人は信用に値する』という性善説。それを夢いっぱいに、そして心温まるコメディとして描く。

初めて本作を見た当時、まだ、アメリカにはこの手の映画が作れるのかと感涙にむせんだ記憶がある。

ストーリィは、自分が実権を握ろうとする腹黒い主席補佐官が、アメとムチで、植物人間になった大統領の変わりとして、主人公に本物を演じさせようとする展開になる。

そんなこと有り得ないだろう。確かにその通りだ。しかし、だからファンタジーなのだ。

しかも思い切り感情移入できるリアリティもある。有名なジャーナリストから実在の議員や監督のオリヴァー・ストーンが本人役で出演しているし、何よりも素直な田舎男が、段々とその気になっていく過程も絶妙で、真のリーダーはこうあって欲しいと思う一般人のツボをストレートに突いてくる。

ゆえに、『下らんデモクラシーの押し付け』と忌み嫌う御仁もいるだろう。そういう人たちの逆鱗に触れるほど、明快に進行していく。

始めは補佐官の言いなりだった主人公が、やがて正義に目覚めるが、逆に、ことの重大さに恐怖を感じる。それは生真面目で気難しい副大統領との面会や、議会での言動、そしてシガニー・ウィヴァー扮する、実は口もきかないほど不仲な大統領夫人との直接対面などである。コメディとして進行し、やがてサスペンスに満ちた展開をも見せる緩急のついた作劇。

で、結局、どうなるのか。主人公が、紆余曲折の末に、そのまま名大統領となるハッピー・エンドだったら、単なるファンタジーだ。そうじゃないところが本作の白眉。

何といっても、二役を演じ分けた主役のケヴィン・クラインの見事さが挙げられよう。「エイリアン」(1979)以降、強い女役の印象があるシガニー・ウィヴァーの新境地も魅力的だし、ご贔屓役者のひとりチャールス・グローディンの彼なればこその的を射た演技も好感が持てる。他にも、シークレット・サーヴィスを演じたヴィング・レイムズや、ベン・キングスレー扮する副大統領や、町なかでチョイと登場する警官まで、いかにも昔のアメリカ映画を見ているような人物ばかりで笑みが絶えなかった。

思わず、ラストは劇場で立ち上がり、『ブラボー!』と拍手を送りたくなったほどだ。

夢と希望に満ちたアメリ カ。殺伐とした現代だからこそ、ひとときの夢を映画に重ねる。

斜に構えず素直に観れば、80年代以降のハリウッド映画で、これほどない名作の一本。

余談雑談 2008年10月4日
遂にポール・ニューマンが鬼籍に入った。随分悪いとの報道は目にしていたが、やはり、亡くなるとひとつの時代が終ったという感慨が深い。 ここの読者でもある友人から、同年代のよしみで、是非<番外編>として何か扱ってくれとも言われた。それほど、ある年