余談雑談 2008年11月11日

今回の都々逸は、上で扱った作品から連想したものしてみた。

「むかし馴染みとつまずく石は 憎いながらもあとを見る」

「むかし馴染み」とは、花柳界では鞍替えした客という意味だろうか。つまり、今は自分でなく別な芸妓を指名している客。一般人としては、昔、『関係』があった相手であろう。そこには『未練』と『嫉妬』が入り混じる。

一方、「つまずく石」は不意に訪れる出来事だ。そして、ふとした拍子に昔を思い出す。だが、あくまで「あとを見る」であって、行動には移さない。

そこに日本人としての美学があったのだろう。ただし、亜熱帯性のスコールとは違うしとしととした微妙な『湿気』がある。言い換えれば『陰湿』性とも取れよう。

しかし、それこそが、多くの文学、映画作品を産みだして来た『湿り気』だろう。

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