スタッフ
監督: ジョン・スタージェス
製作: ジョン・スタージェス
脚本: ジェームス・クラヴェル、W・R・バーネット
撮影: ダニエル・L・ファップ
音楽: エルマー・バーンスタイン
キャスト
ヒルツ / スティーヴ・マックィーン
ヘンドレイ / ジェームス・ガーナー
バートレット / リチャード・アッテンボロー
ラムゼイ / ジェームス・ドナルド
ベリンスキー / チャールス・ブロンソン
ブライス / ドナルド・プレゼンス
セジウック / ジェームス・コバーン
ラムゼイ所長 / ハンネス・メッセマー
ピット / デヴィッド・マッカラム
日本公開: 1963年
製作国: アメリカ ミリッシュ・カンパニー作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
引き続きスティーヴ・マックィーン主演の戦争映画。大好きな映画にして、個人的には映画館で42回も見た最多同一作品。
1943年、第二次大戦下のドイツ。新設されたスタラグ・ルフト北収容所に、連合国空軍の将校ばかり 250名が集められた。捕虜の管理をするのはドイツ空軍だ。
しかし、集められたのは脱走常習の猛者ばかりだった。物品調達のプロで、アメリカ人ながら英空軍に籍を置くヘンドレイ(ジェームス・ガーナー)、トンネル掘りに命を賭けるポーランド人ベリンスキー(チャールス・ブロンソン)、用具製造のプロのオーストラリア人セジウィック(ジェームス・コバーン)などだ。そんな彼らは、入所早々、勝手に脱走を図るが、ことごとく失敗する。中でも、規則など完全に無視し、何度も独房行きになり、『独房王』の異名を取るアメリカ人ヒルツ(スティーヴ・マックィーン)は、所長の逆鱗に触れ、初日早々、独房行きになってしまう。
所長は捕虜たちの傍若無人な態度を先任将校であるラムゼイ大佐(ジェームス・ドナルド)に抗議するが、脱走は捕虜の義務だと笑う。しかし、彼らの行動はバラバラで、統一が取れていないのが現状だった。そんな時、ナチスの秘密警察がひとりの将校を連れてきた。
何と彼こそ、脱走計画立案のプロ中のプロ、バートレット(リチャード・アッテンボロー)だったことから・・・
映画史上に名を残す戦争映画の快作にして傑作。
昔から刑務所なり、収容所から脱走を試みる映画はかなりあった。ほとんどがトンネルをコツコツ掘り進めてとか、ある意味、奇想天外な方法でといった、愚作から秀作まで玉石混合であったが、共通しているのは少人数が逃げようとする作品だったということ。
それを本作では何と総勢250名で集団脱走しようとするのだ。これだけでスケール感が違うと推察できようし、何とこれが実話だというのが恐れ入る。だが、事実とは異なる大胆なアレンジが施され、娯楽映画の要素をこれでもかと詰め込んだ作品に仕上がっている。
立案者はかつてない規模の脱走には、綿密な計画が必要だとばかりに、トンネルも三本同時に掘り進めようとする。すると掘り起こした土の量もハンパではない。その土をどうやって処分するか、また、トンネルが崩れないように、いかに補強するのかといった難題もでてくる。
そういった難問をドイツ軍に見つからずにどう進めていくのか。幸運なことにはドイツ軍は単なる脱走常習者として各収容所から、様々な分野のエキスパートを集めてしまっていたのだ。しかも、捕虜たちは連合軍ゆえアメリカ、イギリス、オーストラリア、ポーランドといったワールド・ワイドな面々にして、実に皆が個性的。
そういった連中がひとつにまとまり脱走を計画し遂行する。登場人物それぞれが得意分野を持ち、収容所内で脱走に必要な資材から、洋服、偽造証明書などを作っていく。その過程が実に面白い。
そんな中、仲間に加わらず、独自路線を行くのがマックィーンだ。いかにもヤンキーで、トッポい兄ちゃんだ。不良少年上がりでアウトローだからか集団行動は苦手。自分の考えをストレートに行動に移す。その姿が実に格好イイのだ。
脱走計画責任者を含めてほとんどがイギリス人ゆえ、どちらかというと地味な面々による地味な作業展開の中で、ひときわ異彩を放ち、映画全体のバランスを上手く緩和している。事実、本作の美味しいところはマックィーンが掻っ攫っているといっても過言ではないだろう。
しかし、数十回も見返しているへそ曲がりな人間としては、別なキャラクターに注目したりする。
自身も戦争中に捕虜の経験があり、出演作では一番好きな作品だと言い切った「偽造屋」のドナルド・プレゼンスや、戦争映画の出演というと、いつも捕虜役ばかりの印象の先任将校役ジェームス・ドナルドに始まり、『サンキュー』と言って墓穴を掘る「情報屋」を演じたゴードン・ジャクソンなどが大好きだ。他にも「洋服屋」を演じたロバート・デズモンドや、偉そうなヒゲを生やした「測量屋」役のナイジェル・ストックなども忘れ難い。
本作を見ていなくても、エルマー・バーンスタインの映画史上に燦然と残る主題曲は聴いたことがあるだろうし、また、マックィーンのバイクでの鉄条網越えなどが有名で、非常に娯楽性の高い作品ではあるのだが、スポーツ感覚溢れる単なる娯楽作ではない。
アメリカ映画だが、イギリス映画の匂いも感じる『暗さ』が混在するのだ。特に脱走後からラストまでは、観客がそれぞれ思い入れしたキャラクターたちが脱走に成功するか否かといった展開にハラハラしながら、切なさと挫折感を味わっていく。待っているのは、お気楽な大団円ではない。
しかし、それを緩和させるがマックィーンのキャラ設定である。特にラストのラストで見せる彼の存在感は圧倒的。
TV画面では、あまり感じられないかもしれないが、銀幕に、不敵な面構で歩く全身像が映しだされた瞬間、パッと華が咲き、一気に画面が引き締まった。真に大きなスクリーンが似合う最後の大スターであったと確信している次第。
3時間近い長尺の映画だが、ジョン・スタージェス監督の正攻法で押してくる作劇と、緩急のついた展開で飽きない一級品として仕上がっている。
何度見ても面白いし、未見の人は見て損のない傑作である。