スタッフ
監督:ピーター・イェーツ
製作:フィリップ・ダントニ
脚本:アラン・R・トラストマン
撮影:ウィリアム・フレイカー
音楽:ラロ・シフリン
キャスト
ブリット / スティーヴ・マックィーン
チャルマース / ロバート・ヴォーン
キャシー / ジャクリーン・ビセット
ベネット / サイモン・オークランド
デルゲッティ / ドン・ゴードン
ワイスバーグ / ロバート・デュバル
ベイカー / ノーマン・フェル
ロス / パット・レネッラ
マイク / ポール・ゲンジ
日本公開: 1968年
製作国: アメリカ ソーラ・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
今回のマックィーンは、彼の脂の乗り切っていた時期の作品で、格好良いヒーロー役であり、かつ、この手の刑事ドラマのはしりの作品。
アメリカ、サンフランシスコ。とあるマフィアの構成員ロス(パット・レネッラ)が、シカゴからやってきた。彼は組織の金200万ドルを盗み追われていたが、議員のチャルマース(ロバート・ヴォーン)が組織のことを議会で証言すれば助けてやると約束していたのだ。
そんなチャルマースはロスでの護衛を警察に依頼する。選ばれたのはブリット(スティーヴ・マックィーン)の他、二名。ブリットたちはホテルにロスを匿し、24時間体制で監視に当たったが、彼が恋人キャシー(ジャクリーン・ビセット)に会いに行っている間に襲撃され、ロスと刑事ひとりが重傷を負ってしまう。
ブリットを罵倒するチャルマースだったが、マスコミの前では自らの宣伝活動に終始した。彼の裏腹な行動に反発を感じながらも、責任を感じるブリット。
そんな中、治療中のロスが死亡してしまう。だが、ブリットは殺し屋をおびきだそうとロスが生きているように見せかけようとするが・・・
スティーヴ・マックィーンの魅力が炸裂する小気味良いアクション作。
何よりも主役のマックィーンが惚れ惚れとするほど本当に格好イイ。そんな彼が独立プロ『ソーラ・プロ』を立ち上げた第一作である。ゆえに、自分の趣味嗜好を全面に押しだしていている。
元来、モーター・スポーツが好きな彼はオートバイ、車と自分で操りたがった。前回扱った「大脱走」(1963)では、自分でオートバイにまたがり鉄条網越えをしたり、本作以後も「栄光のル・マン」(1971)「栄光のライダー」(1972)など、趣味と実益を兼ねた映画を製作し、出演している。
本作でもそんな彼の嗜好からか、登場する車両もかなりこだわっている。カー・チェイスのシーンでマックィーンが運転するのがムスタング350GT、殺し屋が乗っているのがダッジ・チャージャー。
その2台が追いつ追われつする20分にも及ぶシーンは本作の白眉。坂の多いサンフランシスコの市外を縦横無尽に駆け抜け、車内設置のカメラで、運転手目線で写しだされる場面では、実際に劇場で車酔いした思い出がある。以後のカー・チェイスに強い影響を与えたのも頷ける。
また、登場する車としては、恋人のビセットが乗るのがポルシェ365SCだし、議員役のヴォーンが乗るのは権力の象徴ともいわれたリンカーン・インペリアル。カー・マニアは登場人物が乗っている車で、それぞれのバックボーンがわかると言っていた。
それゆえか、本作はカー・チェイスばかりが語られがちだが、DVDで再見したら、ストーリィもかなり面白く、かつ、小気味良いリズム感があると再認識した。
マックィーン以外のキャストも、後に人気女優になるジャクリーン・ビセットは美しいし、スパイ・アクションから演技派へと移行し始まったロバート・ヴォーンは、本作以後、政治家ばかりを演じたがり、実際に選挙に出馬するのではないかとも言われた。他にも、マックィーンの陰で、あまり目立たないが、ロバート・デュヴァルや好きな役者のひとりノーマン・フェルなどが、ガッチリと脇を固めている。
第二次大戦後にアメリカで製作された『刑事ドラマ』とは、ここで扱った作品で例をだすと、ロケを多用した開放感溢れる「裸の町」(1948)、狭い刑事部屋で進行する「探偵物語」(1952)といった集団ドラマから、60年代に入り、リチャード・ウィドマークがでた「刑事マディガン」(1967)、フランク・シナトラ主演の「刑事(でか)」(1968)といったヴェテラン刑事の私生活を絡めた苦悩を描くという系譜がある。
本作はそういった流れから派生した、肩の凝らない60から70年代への過渡期の刑事モノであり、以後、「フレンチ・コネクション」(1971)や「ダーティー・ハリー」(1971)へと続く、型破りな刑事ヒーローのはしりとして位置付けられよう。
こういったところに、役者としての自身のイメージを生かし、また、初めて製作者として携わった彼のセンスの良さを感じる。
やはリ、タダモノではない。