余談雑談 2009年1月20日

初春といえども、まだまだ冬である。それで、昔は、あちらこちらで見たが、このところ、ほとんど見かけなくなったものを題材にした都々逸を選んだ。

火鉢である。風情はあるが、どれほど暖房設備として機能したのだろうか。

「炭をつぎつぎ火ばしを筆に 熱い男のかしら文字」

寒い冬。会えない男のことばかりが頭と心を支配し、落書きのように、灰に相手の頭文字を書いている。そのすぐ近くでは、炭がパチパチと音を立てて燃えているのだろう。

思い出は熱いが、心は冷えている。それとも、逆なのだろうか。たったひとり、部屋で火箸を突ついている女。

やはり、時が移ろい、やって来る春を待つしかないのだろうか。それとも、雪と一緒に、思い出も溶けてなくなるのだろうか。

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