ナッシュビル – NASHVILLE(1975年)

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スタッフ

監督: ロバート・アルトマン
製作: ロバート・アルトマン
脚本: ジョーン・デュークスベリー
撮影: ポール・ローマン
音楽: リチャード・バスキン

キャスト

バーバラ / ロニー・ブレークリー
バーネット / アレン・ガーフィールド
フランク / キース・キャラダイン
オパール / ジェラルディン・チャップリン
ケリー / スコット・グレン
イージー・ライダー / ジェフ・ゴールドブラム
アルバカーキ / バーバラ・ハリス
L.A.ジェーン / シェリー・デュヴァル
リネア / リリー・トムリン

日本公開: 1976年
製作国: アメリカ ACB・ピクチャーズ作品
配給: CIC


あらすじとコメント

『グランド・ホテル形式』からの派生系にしてみた。以後のロバート・アルトマン監督の方向性を決定付けた逸品。

アメリカ、テネシー州のナッシュビル。次期大統領候補ウォーカーの選挙参謀トリプレット(マイケル・マーフィ)は、地元の有力弁護士リーズ(ネッド・ビーティ)の協力を得て、地元のカントリー&ウェスタンの大御所で「ミスター・ナッシュビル」の異名を取る歌手のハミルトン(ヘンリー・ギブソン)をテネシー州知事に担ぎだそうと画策していた。

確かに人前ではミルクしか飲まないほどクリーンなイメージを大事にするハミルトンだが、鷹揚な反面、自己顕示欲の塊でもあった。しかし、保守的でいささか右がかった地での得票を考えると、彼なしに選挙戦は戦えないと踏んでいたのだ。上手くはぐらかすハミルトンに何とか取入ろうとするトリプレットたち。

何故なら、彼らが大統領候補を呼んでの一大キャンペーン・コンサートまで、五日しかなかったからだ・・・

アメリカの病巣をえぐる群像ドラマの傑作。

ただし、見るものに忍耐と寛容を要求する作品でもある。何故なら、本作には主役が居らず、総勢24名もの登場人物の日常をほぼ平等に描いていくから。上記したあらすじは導入部のほんの一部分であり、24人が織り成す日常の点描を見せられ続ける。

当然それぞれが問題を抱えている。そういった人物たちのエピソードともつかないような場面が延々と綴られ上映時間は2時間40分にも及ぶ。

だが、アルトマン監督といえば、長尺の群像劇というイメージを持つ映画ファンは多いと思う。本作以後、「ザ・プレーヤー」(1992)や、遺作になった「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006)まで、ほとんどが同じ流れにあると言えよう。

だが、本作が監督の以後の作品群を決定付けた作品である。

本作をリアルタイムで、劇場で見たとき、この手の展開は初めてだったので面食らった記憶がある。ただ、点描される人間たちを見続けていき、クライマックスで全員が一箇所に参集してくるシーンで鳥肌が立つのだ。

その場面は衝撃的であり、映画史に記憶されるべきだと信じている。何せ、24人の主要人物たちの他にも千人単位の群集がいる場面だ。

そこでのカメラ・ワークは見事。大写しのアメリカ国旗から始まり、その下で並び立つ人物をなめるように写す移動撮影。このカットはカメ ラが動く。

そして次の画面では、並び立って動かない群集の中を、登場人物のみが人をかき分けて移動していく。

見事な切り返しにして、何かが確実に起こると予見させる展開。それまでのやや掴みどころのない日常の点描が集約され、それぞれの人物たちの性格や立場が一挙に浮び上がる。

鳥肌以上に総毛立ったものだ。アメリカが抱える様々な問題が国旗の下に一挙に噴出する。傑作が誕生した瞬間を体感した。

残念ながら、本作は日本ではビデオもDVDも未発売である。つまり見たくても見られない、ある種、幻の作品と位置付けされている。

それは、本作で使用される楽曲の版権の問題であるとも言われている。当然、カントリーの楽曲が多く登場するが、何と、すべて俳優本人たちの自作自演で、版権がクリア出来ないからだと。

しかし、アメリカではDVDがでた。喜んで購入したが、やはり字幕なしはキツかった。日本でも何とかしてくれないものかと心底願っている。

ただ、以後のアルトマンの群像ドラマを先に見て来た人には、当時の衝撃が緩和されはしないかと心配でもあるのだが。

しかし、リアルタイムで見てきた人間からすると、やはり本作がアルトマンの群集ドラマの最高峰であると確信する。

余談雑談 2009年3月7日
常連化した三河島のもつ焼き屋。 「もつ焼き」「煮こみ」の他、おしんこ、トマトといった数少ないメニューが小さな黒板に書いてある。だが、何故か『魚』系の裏メニューがある。 いつもある訳ではないから、正面切って掲げないのだそうだ。 しばらく通った