フォロー・ミー! – THE PUBLIC EYE(1972年)

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スタッフ

監督: キャロル・リード
製作: ハル・B・ウォリス
脚本: ピーター・シェイファー
撮影: クリストファー・チャリス
音楽: ジョン・バリー

キャスト

ベリンダ / ミア・ファロー
クリストフォルー / トポル
シドリー / マイケル・ジェイストン
シドリーの母 / マーガレット・ローリングス
ミス・フレイマー / アネット・クロスビー
メイヒュー / ダドリー・フォスター
クラウチ卿 / マイケル・アルドリッジ
スクランプトン / マイケル・バリントン
パーキンソン / ニール・マッカーシー

日本公開: 1973年
製作国: アメリカ H・B・ウォリス・プロ作品
配給: ユニバーサル


あらすじとコメント

前回紹介した「ロング・グッドバイ」。主役は、どこかトボけていて、おかしな探偵だった。そこからイメージが繋がった作品。ただし、ハードボイルドではなく、ハートフルな展開を見せる名匠キャロル・リードの、ある意味、異色作。

イギリス、ロンドン。上流階級の一員で会計士をしているシドリー(マイケル・ジェイストン)は、妻のベリンダ(ミア・ファロー)が浮気をしているのではないかと疑っていた。そんな彼は妻の素行調査を依頼するべく、秘密裏に探偵事務所を訪れた。

数日後、彼の事務所に見知らぬひとりの男がやってきた。ハンチング帽、短めのコート、ズボン、ショルダー・バッグまで、すべてが白尽くしの格好で、どこか抜けた感じのする男だった。彼はクリストフォルー(トポル)と名乗った。自分は別件の調査中に怪我をして重体になった探偵の代わりにベリンダの尾行をしたと。

早速調査結果を詰問するシドリーだが、クリストフォルーは、調査結果報告の前に、二人のいきさつを聞きたいと言いだして・・・

爽やかでチャーミングな魅力溢れる好編。

歴然とした階級社会があるイギリス。その中でも、上流に位置する会計士の男。自分たち以外の人間を見下しながらも、慇懃に振舞う母親。取巻きの人間たちも背筋を伸ばし、何かというと正装で夕食会やオペラ鑑賞にいそしむ、いかにも格好付けた人間たち。

反対にカリフォルニア出身でヒッピーの友人たちと有り金を叩いて二階建てバスを買い、世界を放浪した自由人の妻。

この二人が夫婦になった。生活環境から価値観まで、まるで違う二人だ。探偵ならずとも、どうして結婚したか知りたくなる。

そこに絡むのがトボけているが、憎めないキャラの探偵。

悩むと食欲が湧くという探偵は、マカロンが大好物で、常にバッグやポケットには、何かしらの食べ物が詰まっている。尾行調査をするのに、白尽くめという目立つ格好で、30歳になる前に23回も転職したと普通に語る男。

実にユニークな探偵像である。それを演じるトポルが好演。掴みどころがないようだが、その実、しっかりと自分を持っている。

展開としては、夫が馴れ初めから、妻の行動に不信感を持ったいきさつなどを、さかのぼって見せていく作劇。

しかし、そこには既に上流階級の人間としての当り前の価値観があり、見ている側には、なるほど、そこが問題なのだと解る展開。

中盤までは探偵が夫の話を聞きながら、それが再現フィルムのようになぞられるが、後半、時間軸が一致してからが面白い展開となる。

その後も時間軸が行きつ戻りつするが、まったく混乱せずに見せる名匠キャロル・リードの手腕は流石である。

当時、世界中で流行っていた愛と平和とフリー・セックスをメインとしたヒッピー現象。人種、階級を取り払い、総ての人間が対等に自由であるといった考え方と、古い概念を固持したがる上流階級の葛藤。

解りやすい設定である。そこに『禅』的発想まで絡める。そういった当時の流行を取り込んだ作品をヴェテランの監督が撮る愉悦。突き放すでもなく、過度な感情移入もさせない。それでいて調和が取れたハートフルな展開。

ロンドンの観光名所案内も兼ね、「ミルク」、「ベーコン」、「プリン」という名前の通りまで実在すると教えてくれる。

そんなロンドンを寂しそうに歩き、やがて、同じ場所を笑顔で歩くようになる、神経質そうだが、魅力的な妻を演じたミア・ファーローが最高にキュート。

何ともイギリス的センスに溢れた遊び心がいっぱいの佳作。

余談雑談 2009年4月5日
三週間振りの発行です。心配してくれて励ましの連絡を下さった読者や友人、また、再開を待っていて下さった皆様に、心よりお礼申し上げます。 思い返せば、3月2日の夜。都内の某繁華街で痛飲した後、路地裏で転倒。近くにいたキャバクラのキャッチが駆け寄