余談雑談 2009年4月25日

闘病には程遠い入院生活。日中や眠れない夜など、自分の病室があるフロアーの待合室の長イスで暇を潰すことも多かった。

そこは二基ずつ向い合っているエレベーター・ホールでもあり、防火扉と柱に遮られ、すぐ向こうにある廊下とナース・センターが、絶妙に区切られた小さな『舞台』であり、それを観客席から見ているような感じでもあった。

看護師や患者が通路を行き来し、その奥の詰所では看護師たちが、個人の人柄を漂わす言動を取っている。

天性の職業として惚れ惚れとする行動を取る者。いかにも『仕事』として、割り切り感を漂わす者など様々。しかも、息抜きと称してこちらの長イスにちょっと坐って話したりとファン・サービスまである。

時々、ドクターたちもやって来て、患者や家族に手術の説明をしたり、看護師たちと談笑したりと、ここでも、患者とは違う人間ドラマを垣間見られた。

特に興味を持ったのは、少し変わったドクター。武道家を目指していたが、そこでは世界が獲れないと諦念し、一発奮起して医師試験を勝取った。港区の高級マンションに住み、ポルシェを乗り回す。妻は素人参加型の有名バラエティ番組の出演者。ただし、容姿はとある漫才コンビのひとりにソックリ。当然イケメンではない方だ。

その人が、自分が夜半に救急搬送されたときに対応してくれた医師だった。そのことを覚えていて、「ボクの初動処置が良かったから」と当然のように笑った。それでも、夜勤手当はコンビニのバイト並だと嘆いていた。

しかし、どこか抜けていて、患者に『えっと、手術してたんでしたよね』とか尋き、何度も入退院を繰り返しているベテラン患者に、逆に投薬や処置法を教わったりする。

医師やナースたちからは蔑まれている存在だが、自分は先生を支持します。何せ、『あなたが痛がらなかったから、帰宅させたけど、本来だったら、即刻緊急入院だったよ』と言ったので。

ある種、知らないことは幸せだと教えてくれた人だから。

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