マルチニックの少年 – RUE CASES NEGRES(1983年)

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スタッフ

監督: ユーザン・パルシー
脚本: ユーザン・パルシー
原作: ジョゼフ・ゾベル
撮影: ドミニク・シャピュイ
音楽: マラボア

キャスト

ジョゼ / ギャリー・カドナ
祖母 / ダーリン・レジティム
メデューズ / ドゥタ・セック
サン・ルイ / ジョビィ・ベルナーブ
ロック先生 / アンリ・メロン
カルメン / ジョエル・パルシー
ジェスネール / マチュー・クリコ
レオポルド / ローラン・サン・シール
レオンス夫人 / リュセット・サリビュル

日本公開: 1985年
製作国: フランス スマファ・プロ作品
配給: ヘラルド・エース、日本ヘラルド映画


あらすじとコメント

中南米を舞台にした作品繋がり。いかに黒人が虐げられて生きていたかを静かに描く繊細さ溢れる作品。

1930年、西インド諸島にあるマルチニック島。そこの首都はフォールだが、そこから離れた田舎のとある集落。

粗末な木造の掘っ立て小屋がいくつかある中のひとつに、祖母(ダーリン・レジティム)と暮らす10歳の少年ジョゼ(ギャリー・カドナ)がいた。近隣の黒人たちはフランス人の経営するサトウキビ畑で、少ない賃金で馬車馬のごとく働かされていた。そんな大人たちがいない日中、貧しいながらも遊んだり、悪戯をして楽しんでいる元気な子供たち。中でもジョゼは、長老のメデューズ(ドゥタ・セック)に色々な話を聞いては、知識を得ていた。

やがてジョゼは学校でも頭角を現し、卒業を期に奨学生試験を受けてみろと先生に言われる。受かれば首都に行ってしまうが、祖母は理解を示してくれ受験するジョゼ。

結果、合格するが、何と四分の一しか奨学金がでないことが判明して・・・

貧しく虐げられてきた黒人たちの日常を静かに描く佳作。

南米大陸の右上の方に位置するマルチニック島。近くにはキューバやジャマイカ、プエルトリコがある。そのあたりは黒人が多い。何故、彼らがそういった場所に居座ることになったのか。

かつて、アフリカから強制的に奴隷として連れて来られ、やがて反乱を起こし、それぞれの地域で自由を勝ち取ったが、結局、他に行き場所がなかったのだ。

そういった黒人たちの歴史を劇中、静かに語る長老の姿が切ない。だから死んだら魂はアフリカに帰るのだと続ける。自然の摂理や人間としての尊厳を教えられる主人公の少年。

いつしか、陽気な音楽に満ちた光溢れる場所というイメージだけで実は何も知らなった自分も、少年同様に育っていく感じがした。

その少年が成長するに連れ、目の当たりにして行く現実。

学校の成績が悪ければ退学し、大人たちと一緒にサトウキビ畑で働くしかない現実。それに反発することは許されないという実情。白人たちは膨大な土地を持ち、彼らに刈り取らせたサトウキビから砂糖を作り、ラム酒を醸造しては利益を得る。

そんな中、 口うるさく、時には手をだす祖母が、本当は心底優しいと主人公が知る瞬間。フランス人と現地人の間に生まれ、自分は特権階級の人間だと信じきっていたハーフの少年が辿る運命。また、集落で一緒に育った少女が奨学生試験を受けろと進められた時の親の反応。自分はモテると常に自慢話をする首都と集落を行き来する船の青年が実は文盲で、好きな女性に恋文を書きたいからと主人公の少年に文字を教わる。

各々に漂う切ないほどの絶望。しかし、それでも皆、毅然として前向きだ。

当時、フランスの植民地だったゆえ純然と存在した差別。人権など認められず、搾取されるのが当然という中で、必死に、そして健気に生きる黒人たち。

憤懣を声高に叫ぶ人間もでてくるが、子供たちはいたって普通だ。貧乏や被差別が当り前の中で生まれて育っていくしかないからだ。

原作者も監督もマルチニックの出身。それをかつて統治していたフランス資本で作る。その場所さへ、どこにあるか知りえなかった島。だが、当然だが、そこにはそれぞれの人間に、それぞれの歴史がある。

そういったことを知るだけでも、映画とは素晴しいと感じさせてくれる小品。

余談雑談 2009年5月2日
大部屋の病室での人間模様。 治療が終り出て行く患者、新たに入院してくる者。共通しているのは、何かしらの疾病や怪我をしているということ。そこで人間の本性が出る。 いきなり自分は大人物だから、一目置けと大風呂敷を広げる者。とあるレースでワールド