遊びの時間は終らない      平成3年(1991年)

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スタッフ

監督:萩庭貞明
製作:結城煕良
脚本:斉藤ひろし
撮影:高瀬比呂志
音楽:高木完、工藤昌之

キャスト

平田巡査 / 本木雅弘
鳥飼署長 / 石橋蓮司
桑名ゆり子 / 伊藤真美
レポーター柏崎 / 萩原流行
深川警部補 / 西川忠志
佐原刑事課長 / 斉藤晴彦
深川本部次長 / 原田大二郎
田代警ら課長 / 赤塚真人
松木防犯係長 / 松澤一之
浅虫敬子 / あめくみちこ

製作国: 日本 アルゴ・プロジェクト作品
配給: アルゴ・プロジェクト


あらすじとコメント

今更であるが、アカデミー外国語映画賞を「おくりびと」が受賞した。監督の滝田洋二郎作品は別な回に扱うとして、今回は主演した本木雅弘主演のあまり知られていないが、面白い設定にして、警察やマスコミを痛烈に批判する社会派コメディにしてみた。

福島県、平市。とある平日の午後3時近く、市内にある「平信用組合」にサングラスをかけ、長いアーミー風コートを羽織り、古い皮バッグを持った若い男平田(本木雅弘)が、ヤンキーっぽい仲間の中野(今井雅之)が運転するジープから降りて入店してきた。

平田は黙ってカバンをカウンターに置き、通帳のページをめくって女子行員に見せた。『銃を持っている。大人しく金を詰めろ』と書いてあった。驚いた女子行員は、そっと足元にある非常ボタンを押した。支店長机の警報ランプが点き、銀行強盗であることが暗号で全行員に知らされ、同時に警察に通報が入った。

すぐに銃を携行したキャリア組の若い深川警部補(西川忠志)が、客を装って入ってきた。深川の不審な行動に注目した平田は、彼が上着の下に拳銃を所持しているのを認めるや、いきなり、M-15ライフルを長いコートの下からだすと、深川目掛けて「バン!」と言った。驚く行員たち。

何と、これは所轄の警察署が信組と組んで実行した防犯訓練だった。

しかし、犯人役の謹厳実直な警ら課巡査の平田は、様々な犯罪事件の書籍を熟読し、迫真の訓練をするため、そのまま行員たちを人質に立て篭もってしまって・・・

発想勝利にして、面白い展開を見せるコメディ作。

いつもは馴れ合いで、建前上の防犯訓練をする銀行と警察。しかし、今回はくじ引きで犯人役に決まった超真面目な警察官が、真剣に犯人を演じようとしたことからトンデモナイ方向へ転がっていってしまう。

しかも、間抜けな署長が、いかにも体制的、かつ、単純な発想で対応し、ことをややこしくし、ひいては警察の上層部のメンツをかけた攻防戦になる。更には、良いネタだと地元放送局は面白くするためには手段を選ばない、東京から左遷されて来た元花形レポーターを投入することにより、益々、混乱して行くというオハナシ。

次々と戯画されたキャラクターが登場してくる。いささかステレオ・タイプなのが気になるが、それでも、いかにもいそうな面々で、見ていて、こういう奴いるよな、と思わず笑ってしまった。

体裁だけを気にかけ、縦社会で素直に右へ倣えする上層部といった体制側への痛烈な批判と、面白くするためには、なり振り構わぬマスコミへの非難が浮かび上がる。

その上、あくまでも訓練なので、犯人と警察側の出来レースにならないようにと中立を期するため、行内に撮影クルーが入って中継するに及んで、主人公をヒーローと持ち上げる一般市民たちまでが参集してくる。当初は慣れ合いの訓練であるからと、客に変装して参加している警察官もいる。そういった周囲の人間たちが何を考え、どんな行動を取っていくのか。

次々と繰りだされる設定の展開も面白い。ラスト近くに、ややトーン・ダウンするのが、いかにも日本映画の弱点であるのだが、それでも、練られた設定を真面目におかしく演じる役者たちが上手い。

特に主役の本木雅弘は謹厳実直であるがゆえに、極悪犯を真摯に演じようとする二面性を上手く表現し、印象深い。

他には、警察署長役の石橋蓮司、レポーター役の萩原流行がわざとオーバーアクトでキャラを際立たせ、逆に捜査課長の斉藤晴彦と直属の上司である警ら課長役の赤塚真人などが、出しゃばり過ぎない演技でアクセントを加える。

最近はこういった、ひねりの効いたコメディが少なくなったと嘆いてしまうような、興味深い佳作である。

余談雑談 2009年5月4日
今回の都々逸。 「顔見りゃ苦労を忘れるような 人がありゃこそ苦労する」 ごもっとも、と言いたくなる。もしくは、当り前だろ、と声を掛けたくなる。 この手の言い回しは、昔の『江戸言葉』的表現。「親父ゃ、俺より歳が上」とか、「雨の降る日は、天気が