ハリー奪還 – LET’S GET HARRY(1986年)

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スタッフ

監督: アラン・スミシー
製作: ダニエル・H・ブラット、R・シンガー
脚本: チャールス・ロバート・カーナー
撮影: ジェームス・A・コントナー
音楽: ブラッド・フィーデル

キャスト

ジャック / ゲーリー・ビジー
コーリー / マイケル・ショーフリング
シュライク / ロバート・デュヴァル
スペンス / グレン・フライ
ポチャウスキー / トム・ウィルソン
ハリー / マーク・ハーモン
バーク / ベン・ジョンソン
オチョバー / ギレルモ・リオス
ヴェロニカ / エルビィティア・カリロー

日本公開: 1987年
製作国: アメリカ ブラット,シンガー・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

今回は『南米の火薬庫』と呼ばれるコロンビア。世界に供給される麻薬生産地帯としても有名で、様々な映画で登場するが、今回はB級ティスト溢れる、いかにもアメリカ人好みの作品。

南米コロンビアのグアティケ。ダム建設の開所式に出席した米国大使がテロリストらしき集団に誘拐されるという事件が起きる。しかも、その時、持ち前の正義感から、大使を助けようとした建築技師ハリーも一緒に拉致されてしまう。

その一報に、イリノイ州の田舎町に住む、彼の弟コーリー(マイケル・ショーフリング)は、議員に掛け合おうとするが、複雑な政治情勢から考えて、アメリカ軍による救出は不可能だと断られてしまう。

腹の虫が収まらないコーリーは、友人たちに声を掛け、自分たちだけで救出に向かおうと画策する。しかし、誰も戦闘経験もなければ、武器購入の仕方や、監禁場所の特定など、できるはずもない。それでも前向きなコーリーは、自らも同行することを条件に、狩猟が趣味で地元の大金持ちの中古車ディーラー、ジャック(ゲーリー・ビジー)に資金提供を受け、ゲリラ戦に長けた人間を探すことにする。

だが、広告に応募してきたのは使えない人間ばかり。もはや、誰も頼る人間がいないとあきらめかけたとき、物影から声がした。

それは名誉勲章を授与された経験のあるシュライク(ロバート・デュヴァル)だった・・・

素人のグループがゲリラ相手に救出作戦を敢行するアクション作。

正義感に溢れ、開拓者の血を継ぐ、いかにもフロンティア・スピリッツ溢れる熱血家族。その血筋ゆえ、長男は拉致され、弟は自警団的グループを編成して敵地へ乗り込もうとする。そんな息子の行動をあうんの呼吸で見守る父親。

まさに往年の西部劇の設定だ。ただし、敵はインディアンでなく、南米のテロ集団。

なるほど、考えた設定だなと感じた。しかも、メンバーは田舎町からでたこともないような青年たち。当初こそ、救出に向おうと結束するものの、やはり現実を考えると無謀であり、命の危険性もある。当然、二の足を踏む人間もでてくる。

そんな中に、アメリカン・ドリームを実現したといわんばかりに、派手な毛皮のコートを着て威張りくさる、いかにもの成金男が絡んでくる。で、プロはたったひとり。とはいっても、ランボーのような筋骨隆々のヒーローではない。盛りが過ぎ、随分とくたびれた印象が漂う中年男だ。

そんな一団が敵地へ乗り込む。血湧き肉踊るアクションが連続するかと期待すると、かなり外してくる。そこに単純な娯楽活劇だった『映画』とは違う時代性を感じた。どこか妙にリアルなのだ。

銃の撃ち方も知らない素人集団。だが、開拓者たちの血が騒ぐというアメリカ人像が鼓舞される。単純な筋運びだが、当然プロはひとりしかいない。他は誰も頼りにならないという設定で、無謀な作戦を実行する。

見続けていって、ふと、どこかに体制側の作為が感じられた。インテリ層にではなく、登場人物たちの設定同様、田舎町に住み、娯楽は、映画と酒、という人間たちに訴える作品。

自分たちの大義の名の下に異国に侵攻するのは正義である。まして、政府が正面切って侵攻できない場所に、犠牲を厭わず個人的なグループで行くのは、真のヒーローたちである、という意図さえ感じた。

しかし、映画としては単純に面白いのも事実。当然、様々な難関が待ち受け、それをクリアしなければ次へ進めない。まるでゲームのような展開だ。

そういった展開を面白く見せるのは何といっても、ロバート・デュヴァルの存在感である。どこか、黒澤明の「七人の侍」(1954)のリーダー志村喬に重なる、盛りは過ぎたが、いかにも頼りになるプロという風情。

その他には、常に葉巻を咥え、自分こそ英雄だと身勝手な正義感に燃える、いつも悪役専門のゲーリー・ビジーの、低脳ゆえに、ふてぶてしい田舎男も存在感がある。

監督は、アラン・スミシー。実は、実在しない監督名で、自分の作品として認めたくないとか、ギャラが折り合わなかったとか、様々な訳あって実名をだせない監督の総称である。

で、本当の監督名はスチュワート・ローゼンバーグ。ポール・ニューマン主演の「暴力脱獄」(1967)、「新・動く標的」(1975)や、ロバート・レッドフォードがでた「ブルベイカー」(1980)などを作っている。

本作で描かれるのは、窮地に陥る人間を助けに行く格好良い騎兵隊というイメージ。そんな往年の西部劇に、リアルな現代性を絡めたアクション作。ただし、B級であるが。

余談雑談 2009年5月9日
退院して一ヶ月。 当然、すぐに元通りになるはずもなく、パソコンの打ち込みも思うように手が動かず歯痒い。 連休明けに、しばらく振りに行った病院のリハビリでも、サボっていたせいか、また、動きが悪くなっていた。で、ふと考える。「一進一退」かなと。