長州ファイブ cyosyu five   平成18年(2006年)

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スタッフ

監督:五十嵐匠
製作:前田登
脚本:五十嵐匠
撮影:寺沼範雄
音楽:安川午朗

キャスト

山尾庸三 / 松田龍平
野村弥吉 / 山下徹大
志道聞多 / 北村有起哉
伊藤俊輔 / 三浦アキフミ
遠藤謹助 / 前田倫良
村田蔵六 / 原田大二郎
毛利敬親 / 榎木孝明
高杉晋作 / 寺島進
佐久間象山 / 泉谷しげる
エミリー / ミッシェル・ダンカン

製作国: 日本 「長州ファイブ」製作委員会作品
配給:リベロ


あらすじとコメント

日本史の授業などでは、触れられることの少ない事実。『井の中の蛙大海を知らず』だった日本が、どのように近代化していったのか。その事実。

1862年江戸。ペリーが浦賀に来航して10年後。『異国』を敵とみなし、「攘夷」を訴える長州藩士たちは品川御殿山に建設中のイギリス公使館を高杉晋作らと焼き払った。

その中に、若き山尾(松田龍平)、伊藤(三浦アキフミ)らがいたが、彼らの心はどこか空虚だった。そんな彼らは、佐久間象山(泉谷しげる)に、これからは「敵」である外国に人材を派遣し、先進技術を取得せねば日本は滅びると教えられる。

彼らはその意見に影響されるが、当時、海外へ行くことはご法度で、見つかれば死罪であった。しかし、だからこそ、命懸けでやるだけのことがあると確信し、密かに仲間を募った。

すると介在者にイギリスへの密航とロンドンでの滞在費として、ひとり千両を要求されて・・・

日本が世界に互する先鋒となった青年たちを描く骨太ドラマ。

歴史が大きくうねり、時代が激変していた時期。長期に渡って実権を握ってきた幕府に対して、地方武士である若者たちは、自国の将来を心底案じていた。

その中、五人の若侍たちが、五年という約束で西洋の近代文明を勉強しに行く。だが、中には、立身出世や名誉のためにという青年もいる。

初めて着衣する「洋服」。ひとりに一着だけ支給される。当然、安物で、着替えもない。その着の身着のままで、渡航する。現代と違い、どれほど長い時間をかけ帆船で渡航せねばならなかったか。それだけで、時間のロスがかなり生じるのだ。

しかも、『無』といって良いほどの情報量である。更には当然、言語も違う。そして、見つかれば死刑。まさに『命懸け』なのだ。

そんな彼らが、初めて目の当たりにする『近代文明』。何故、鉄の塊が海に浮くのか。それも理解し難い。そして、初めて見る『鉄道』。

完全に異次元の世界である。そして、それが当然のように存在するイギリスという国。こんな国と戦っても勝てる訳がない、と痛感する若侍たち。しかし、彼らは『生きたる機械』として、様々な分野で勉強し、理論や技術を習得し日本へ戻らなければならない。

『鉄道』に興味を持つ者。『造船』に将来を賭ける男。しかし、そんな彼らに洩れ伝わってくる、激変している日本の状況。「攘夷」と叫びながらも、こちらとの文明の差を知らない同志たちの存在。

そんな中で、彼らは何を得、そして学んでいくのか。

日本映画ゆえ、ふんだんに予算をかけられないので、些か安っぽい場面なども散見するが立派な作品である。

ある程度のフィ クションが入ってはいるが、ほぼ、事実であるという。

鎖国から開国。江戸時代から文明開化の明治時代へ。その時に、実際に日本国を牽引して行ったのは誰であるのか。ラストに流れる、帰国後の五人の歴史上の実績に鳥肌が立った。

世界に名立たる『先進国』日本。その始まりが集約されている。この小さき五人の実績が、どれほど現代社会に貢献しているのか。しかし、脈々と流れ続ける「技術の革新と進歩」が、逆に発生させ、増長させて行ったことは何であるのか。

情報なり、自由なりが謳歌できる現代でこそ、江戸時代の生活様式に憧れる人間もいる。逆に、誇り高き民族性による技術革新で世界を牽引するべきという人間もいる。また、双方の優れた点を兼ね備えた絶妙のバランス感覚で生きたいと思う人間もいよう。

そのどれもが正しいと思う。何故なら、そういう確固たる意見を持つ人間たちは、本作の五人同様、『無関心』ではないからだ。

学校の「日本史」の授業では、ほとんどスルーされることである。しかし、彼らなしには、現代日本はあり得ないと言ったら過言であろうか。

それでも、見ておいて損はない作品だ。

余談雑談 2009年8月11日
今回の都々逸。 「来るか来るかと待つ身のつらさ 何処へそれたか夏の雨」 今年は東北地方など梅雨明け宣言がでないようだ。その上、台風がいきなりやって来たりした挙句、冷夏のようである。 暑きゃ暑いで文句を言い、冷夏となれば農作物が心配だと口にす