お盆休み真っ最中である。こちらは、どこに行く宛てもなく、自宅待機中。
窓から閑散とした街並を眺め、何だか、東京の空の色がいつもと微妙に違って、澄んでいるような感じがした。
そんな8月15日の今日、日本では戦争が終わった日だが、イタリアでは「聖母被昇天祭」という祝日である。
ふと、30年近く前のこの日、イタリアの『リミニ』でヴァカンスを過していたことを思い出した。そこはアドリア海に面したリゾート地で、フェリーニ監督の生まれ故郷でもある。
徹夜で大騒ぎした後、同行していたイタリア人の悪友と夜明け前の海岸に行き、朝霧の中、埠頭に到着した客船から降りてくる人々を眺めた。やはり、我々とは違って絵になるなと感じ、滞在していた小さなホテルに戻った。
静まり返った食堂では、眠気眼のウェイトレスたちが朝食のためのセッティングをしていた。客は誰も居らず、奥の小さなテーブルに座り、カプチーノを頼んだ。壁に据え付けてあるテレビから流れていたのはMGMミュージカル「上流社会」。イタリア語に吹替えらえたグレース・ケリーやルイ・アームストロングを違和感を覚えつつ眺めていたら、彼が、今日の祝日はチップを弾む日でもあるというので、カプチーノ一杯分以上のチップを置いた。
あの朝も晴天だった。東京の朝日を見つめながら思った。この青空も、あのときのイタリアの晴天と繋がっているのだろうか、と。