スタッフ
監督: リチャード・マーフィ
製作: フレッド・コルマー
脚本: リチャード・マーフィ
撮影: チャールス・ロートン Jr
音楽: ジョージ・ダニング
キャスト
クランダル大尉 / ジャック・レモン
ハンソン少尉 / リッキー・ネルソン
ヴァンデウォーター少佐 / ジョン・ランド
パターソン / チップス・ラファーティ
マックラング大尉 / トム・タリイ
デヴィッドソン / ジョビー・ベイカー
スパーク / ウォーレン・バリンジャー
マージ / パトリシア・ドリスコル
サマダ少佐 / テル・島田
日本公開: 1960年
製作国: R・マーフィ・プロ作品
配給: コロンビア
あらすじとコメント
前回の「ミスタア・ロバーツ」でアカデミー助演男優賞を獲ったジャック・レモン。そんな彼が、同じく海軍将校を演じたコメディ作にしてみた。
1943年初頭。日本海軍が優勢で、ガダルカナル海域を掌中に収めていたころ。米海軍のクランダル大尉(ジャック・レモン)は、念願叶い艦長として特殊任務に就くためオーストラリアのタウンズビルに配属された。
しかし、彼に与えられたのは、ヨットに毛の生えたようなボロボロの小さな帆船であった。意気消沈するクランダル。しかも、他の乗組員は、汽船にしか乗船経験のない兵士だけ。当然、帆のかけ方さえ知らない。あきれるしかない彼を怒らせたのは、この命令が親友であるヴァンディウォーター少佐(ジョン・ランド)の差し金だと知ったからだ。
何とか命令回避出来ないかと、悩みながら酒場で酔っ払っていると、少佐の美人秘書がやって来て・・・
ご都合主義全開で描く戦争コメディ。
前回紹介した「ミスタア・ロバーツ」(1955)で、アカデミー助演男優賞を獲ったジャック・レモン。流石に受賞するだけあって、演技と存在感はバツグンであった。
実は、今回ここで扱うのに彼の役どころであったパルヴァー少尉の後日談を描いた続編「ミスタア・パルバー」(1964)にしようかとも思ったのだが、レモンは出演せず、ロバート・ウォーカー Jrというどうでもいい役者が演じた、どうしょうもない作品なのでやめた。何せ、舞台設定は、全作同様“ボロバケツ”号で、ヘンリー・フォンダの後任という設定なのに、艦長ら他の役者まで総取替えである。
ならば、ジャック・レモン自身が同じようなイメージで演じた本作のほうが良いだろうと。
しかも、「ミスタア・ロバーツ」では、戦闘シーンもなく、実に舞台劇の映画化らしい群像コメディであったが、こちらは敵である日本軍も登場し、戦闘シーンまである娯楽作という作り。
ただし、日本軍役は日系二世で名前も知らない役者だし、メインとなるのがヨットのような帆船。大掛かりな戦闘シーンなどはありもしない。ということはアイディア勝負になる。
しかし、いかにも大雑把なアメリカ人が好みそうな、日本人はおろか、南洋の人々に対しても差別的発想で押してくる。しかも、レモンの役柄も「ミスタア・ロバーツ」の役とイメージがダブらないように、途中から責任感溢れる英雄になろうと力演を見せていくのだ。
そのチグハグさが、どうしても馴染めないと感じた。確かに、面白いギャグも登場するが、あくまでも単発で終わり、連鎖性がない。しかも舞台がオーストラリアやパプア・ニューギニア付近だが、ロケしているのはハワイである。そこもマイナス・ポイントである。
もっとも、作られた時代を考えれば致し方ないことだろうが。
マイご贔屓のジャック・レモン。アカデミー賞を受賞して、しばらく弾けなかったが、本作直前に出演したビリー・ワイルダー監督の「お熱いのがお好き」(1959)で人気爆発した直後にして、初の主演作品。
熱の入り方も違ったことだろう。コメディとして始まり、割と真面目な戦争モノと変貌していく作品。
ただし、成功作とは言い難い。