スタッフ
監督: スタンリー・ドーネン
製作: スタンリー・ドーネン
脚本: ヒュー&マーガレット・ウィリアムス
撮影: クリストファー・チャリス
音楽: ノエル・カワード
キャスト
ヴィクター / ケーリー・グラント
ヒラリー / デボラ・カー
チャールス / ロバート・ミッチャム
パティ / ジーン・シモンズ
セラーズ / モーレイ・ワトソン
美容室受付譲1 / ジョアン・ベンハム
美容室受付譲2 / グェン・ワットフォード
髪の美しい女性 / エリザベス・オリオン
日本公開: 1961年
製作国: アメリカ フランドン・プロ作品
配給: ユニバーサル
あらすじとコメント
俳優ロバート・ミッチャム。タフガイのイメージが強いが、中々どうしてコメディもいける。で、前回の「何という行き方!」同様、『金持ちヤンキー』というイメージで登場するコメディ出演作にしてみた。
イギリス、ロンドンから列車で一時間の場所にあるリンレイ。
そこに由緒正しき貴族の大豪邸があった。持主は伯爵のヴィクター(ケーリー・グランド)と妻のヒラリー(デボラ・カー)夫妻だ。
彼らは邸宅を政府の観光客誘致事業に応じて、一般公開していた。当然、女中や召使などの使用人たちは国家公務員。ヴィクターは僅かばかりの入場料の合計を計算し、他には特段何をするでもなく日がな過し、ヒラリーは、きのこ栽培に精をだしていた。
そんなある日。ヒラリーが自室にいると、「プライヴェート」の札を無視してとある男が入ってきた。彼はチャールス(ロバート・ミッチャム)という、石油で儲けたアメリカの大富豪だった。彼は夏を過すため、ロンドンの友人を訪ねてきていたのだった。
何とか追い返そうとするヒラリーに、一目惚れしてしまうチャールス。一方、貴族階級出身の彼女は、今までにいない粗野だが、スマートな会話をするアメリカ人に興味を覚える。そんな彼女の変化に気付いたチャールスは、とたんに口説きだす。しかも、彼女が一週間に一度、髪の手入れにロンドンへ行くと知り、向うで逢おうと熱心に誘った。
そんな申し出を断り続けるヒラリーだったが・・・
米英双方の恋愛感を皮肉たっぷりに対比するコメディ。
由緒正しき貴族とはいえ、今や落目の中年男。それに引換え、妻はたくましく生きようとしている。そこに、夫とは全く違うタイプのアメリカの成金がやってくる。
俗にいう「よろめきドラマ」と呼べる設定である。
元々は舞台劇なので、洒落た会話がポンポン飛びだす。例えば「米英二国間の厚い壁は共通言語が原因」とか、ミッチャムがカーに「マーム」という呼称を使うと「イギリスではその言葉は女王陛下のみに使用しますわ」といった具合。
多少、野暮ったいがタフな感じのアメリカ人と、落目だがプライドだけは譲らないイギリス人といった国民性の違いを際立たせ、結局、女は強引な男に弱いという、いかにもの展開になっていく。
結婚12年目だが、未だに仲睦まじい夫婦仲を見せておきながら、ふとした拍子にすれ違っていると感じさせる冒頭部分も洒落ているし、やがて夫が妻の不貞に疑念を抱いて、イギリス男らしい遠まわしで陰険な言動が際立ってくる。
そこに妻の友人でもあり、かつて伯爵と恋仲だった女性も絡んできて、話は、益々ややこしくなっていく。
しかし、本作の登場人物の中で、面白い設定なのは小説家志望の執事。冒頭で、閑職なのに高額過ぎると減給を願いでて、小説家になる夢はあきらめます。何故なら、私は現状に満足し、精神的にも何ら悩みがないからです、と続ける。
彼こそが、一番冷静である。しかし、後半で彼は重要な鍵を握ることになる。
イギリスで理解ある夫を持つ貞淑な妻が他の男に心動かされるという展開は、オールド・ファンなら感付くかもしれないが、名作中の名作「逢いびき」(1945)と同じ設定である。
あちらでは、あくまでも不倫する二人が主役で、夫は刺身のツマ程度の扱いだったが、本作ではそんな夫が主役だ。
更に面白いのは「逢いびき」の脚本を書いたノエル・カワードが、本作の音楽を手掛けていること。オープニング・ソングの歌詞など、いかにも自国の貴族を皮肉った内容で苦笑してしまった。
ただ、本作は、やや強引な大団円を迎えるので、気落ちしてしまい、見終わった後に、同じく「逢いびき」をモチーフにしたコメディ「ウィークエンド・ラブ」(1973)を再見してしまった。
これだけのスターを集めたのだから、もっと傑作かとも思ったが、やはり時代がものをいうのだと痛感した。
それでも、三者三様の演技は現代の役者とは違い、安心して楽しめる。