スタッフ
監督: マイケル・アンダーソン
製作: ロバート・クラーク
脚本: R・C・シェリフ
撮影: アーウィン・ヒラー
音楽: レイトン・ルーカス
キャスト
ギブソン中佐 / リチャード・トッド
ウォリス博士 / マイケル・レッドグレイヴ
ウォリス夫人 / アーシュラ・ジーンズ
ヒューザル将軍 / バジル・シドニィ
ウィットワース / デレク・ファー
サマーズ / パトリック・ファー
スパフォード / ナイジェル・ストック
農民 / ナイジェル・パトリック
プルフォード / ロバート・ショウ
日本公開: 1955年
製作国: イギリス A・B・P作品
配給: BCFC コロンビア
あらすじとコメント
潜水艦映画が続いた。ここいらで少し路線変更。邦題が「暁の出~」まで前回と同じ、イギリス製の戦争映画。ただし、海から空へと変わる。
1942年、イギリス。民間兵器会社に勤めるウォリス博士(マイケル・レッドグレイヴ)は、敵の生産力低下を狙い、ドイツ西部のルール地方の三つのダムを破壊すれば、大量の水が下流域にある工業地帯をも押し流して、全滅させられると考えていた。
しかし、ダムを破壊するには30トン爆弾が必要なのだが、それを運搬する爆撃機がない。それに、ダム湖には魚雷避けの防護ネットが張り巡らされ、水中からの攻撃も不可能であった。当然、少人数の特攻隊を編成しても、3箇所同時の爆破はできるわけがなかった。
そこで考えついたのが『水切り作戦』。だが、常識では考えられない作戦に、爆撃隊のギブソン中佐(リチャード・トッド)は・・・
実話を基にした戦争映画の隠れたる佳作。
同じ邦題で、「暁の出撃」(1970)というロック・ハドソンとジュリー・アンドリュースが出演した映画があり、恐らくはそちらの方が、若干は、有名であろうが、本作のリメイクでもなんでもなく、まったくのベツモノ。
本作は、突拍子もないアイディアを具体化し、実行するまでを描く作品。
メインの『水切り作戦』とは、川などで石を投げ、水面を何度も切って飛び跳ねていく遊びのアレである。それを本物の爆弾で実行させようとする。
主役は博士である。当然、力学など、様々な角度から実験を繰り返し、データを積み重ねていく。その過程が面白い。
試行錯誤の果てに、球状の時限爆弾を作り、それを水面スレスレの30メートルの低空から落とし、水面をバウンドさせ、ダム壁にぶつけ、そのまま壁に沿って水中に落下させた後、爆発させる。
そうすれば、大型爆弾でなくとも、ダム壁に亀裂が入り、水圧でダムが自ら決壊するという戦法である。しかし、理論上はそうでも、簡単に上手くいく訳がない。
それを丹念に描いていく。そう、イギリス映画お得意のセミ・ドキュメンタリー・タッチである。しかも、実際に爆撃を行ったアブロ・ランカスター爆撃機を使用しての撮影。
しかし、当初は石とは違い、爆弾では上手くバウンドしない。すると、進入速度や、角度が重要になってくる。
しかも実際に爆撃に行くのは夜中で、照明もない場所。どのように現地で、正確な距離を割り出すのか。
投下地点が手前過ぎては爆弾は、ダム壁手前で沈む。短いとオーバーして、ダム壁を飛び越えてしまう。そういったポイントを修正しつつ、訓練を重ねていく。
そのシーンは、かなり迫力がある。水面スレスレに飛行し、爆弾を落とした後、急上昇する。そうしなければ、今度はダムに機体がぶつかるのだ。しかも、実行は5月の満月の時期で、貯水量が一杯になるときしかない。それまでに訓練を完了させる。
当然、実戦では敵の攻撃もあるし、内陸深くまで、無事、辿り着かなければならない。
実戦場面はミニチュアや、いかにもの合成なので、今の技術からすれば微笑ましいものがあるが、それでも、正攻法で押してくる作劇は立派である。
当然、味方にも甚大なる被害がでる。それでも、鉄の意志を持って任務を遂行する。
白黒スタンダードの地味な戦争映画だが、面白い作品である。