スタッフ
監督: ルキノ・ヴィスコンティ
製作: ゴッフレード・ロンバルド
脚本: スーゾ・チェッキ・ダミーコ、P・F・カンパニーレ、他
撮影: ジュゼッペ・ロットゥンノ
音楽: ニーノ・ロータ
キャスト
ドン・ファブリッツィオ / バート・ランカスター
タンクレディ / アラン・ドロン
アンジェリカ / クラウディア・カルディナーレ
セダーラ / パオロ・ストッパ
マリア・ステラ公爵夫人 / リーナ・モレッリ
ピローネ神父 / ロモロ・ヴァッリ
コンチェッタ / ルチェッラ・モルラッキ
トゥーメオ / セルジュ・レジアーニ
赤シャツ隊将軍 / ジュリアーノ・ジェンマ
日本公開: 1964年
製作国: イタリア チタヌス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
「CC」と呼ばれ、イタリアを代表した女優のひとりクラウディア・カルディナーレ。しかも、ここで初めて扱う、巨匠中の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督による骨太の傑作。
イタリア、シチリア島。イタリア統一運動が起こり、ガリヴァルディ将軍率いる『赤シャツ隊』が、シチリア島に上陸した1890年のこと。
島内の由緒ある名門サリーナ侯爵のドン・ファブリッツィオ(バート・ランカスター)も、心中穏やかではなかった。そんな中、侯爵たちは年中行事のひとつである田舎の別荘へ静養にでかける。
その中には、侯爵の甥で、赤シャツ隊員でもあるタンクレディ(アラン・ドロン)の姿もあった。そんな彼に、侯爵の娘が惚れていたのだが、侯爵が格下過ぎる男との結婚を許可するはずもなかった。
一行が訪れた別荘がある村の村長が、歓迎の晩餐会を催した。その時、村長の娘のアンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)を見た、タンクレディは・・・
歴史が動き、没落していくものと隆興していくものを描き切った傑作。
背筋が伸びるほどの壮巌さ。鳥肌が立つほどの華麗さ。そして、胸が締め付けられる諦念感。
それらが完璧なる美術品や調度品、また、荒涼たる自然の中で、綴られて行く快感。すべてのシーン、どのカットでも、震えるが起きるほど豪華絢爛なショットの連続。
映像表現としての完成度の高さと美しさに絶句した。
貴族出身のヴィスコンティゆえに描くことができた作品であろうし、個人的には『大河ドラマ』と称される作品が、数多くある中でその最高峰であると確信している作品でもある。
本作で描かれる時代とほぼ同時期、日本は「江戸」から、「明治」ヘと劇的に変化した時代に重なる。
当時イタリアは、徳川家15代の単独統治であった日本と違い、オーストリア領の北部イタリア、サルディニア法王庁の領土であった中部イタリア、それに南部のナポリ王国といった大小様々な王国、公国が独立してあった。それらをまとめ上げ、ひとつの「イタリア」という『国』として作り上げようと起こった運動が背景である。
純然たる『階級制度』が存在し、その場所を統治するものは絶対的な権力を持っていた。
代々、受け継がれてきた『血』を痛感しながらも、時代が劇的に変化することを肌で感じる主人公。一方で、時代の先駆者として伸し上がろうとする若者。メインは、この二人の対比である。
それが迫力満点の戦闘シーンや、豪華絢爛なる舞踏会といった、見事に対比の効いた壮大なスケールの中で繰り広げられて行く進行。
ヴィスコンティ自身の育ちの良さと、男色家としての繊細さが見事に融合し、昇華した作品であり、またイタリア映画といえばマルチェロ・マストロヤンニに代表される、背の低い、いかにもラテン系の色男が人気であった時代に、ハリウッドの筋骨隆々のバート・ランカスターを主役に据えるという、意外性に満ちた、だが、それが見事にハマった選択肢にも驚かされる。
日本初公開は大幅な英語短縮版で公開されたが、以後、イタリア語オリジナル・バージョン、完全復元版と何度も手直しがされた作品である。
現在は、その最新完全版がDVD化されている。できうれば、劇場の大画面で見て欲しい作品の最右翼であるが、文句は言うまい。
日本を代表するダイナミックな作劇を得意とした巨匠黒澤明が、ヴィスコンティ作品に、どれほどの影響を受けたかが垣間見られるであろうし、片や、本物の調度品にこだわり、静かな作品ばかりを撮り続けた名匠小津安二郎にも相通じる、人生の黄昏の寂寥感をも感じられるはずである。
恐るべき傑作である。