先立て、気温が20℃近くまで上がった午後。散り始めた櫻の花びらを受けながら、数週間ぶりに3キロ先の酒場へ徒歩で向った。
いつものように、わざと路地を選んで歩いた。時折、低い家の上から降り注ぐ西日に、随分と陽が伸びたな、と眼を細めた。
歩きながら角を曲がると不意に、満開の櫻が視界に飛び込んでくる。そこは学校であったり、神社であったり。
まったく草花に興味はないので、平素、どこに櫻の木があるかなど、気にも留めていなかった。
しかし、この時期、西日を受けて咲き誇る櫻には、何か訴えるものがある。しかも、足元には小さな風に運ばれる花びらが踊る。
時折、見惚れて立ち止まった。しかし、何故、日本人はこうも櫻が好きなのだろうか。淡い色だからか。儚いから、だろうか。
いつもより、遅くなった到着。相変わらず無愛想なオヤジさんが、いつものように迎えてくれた。