スタッフ
監督:古厩智之
製作:丹羽多聞アンドリウ
脚本:渡辺千穂
撮影:池内義浩
音楽:遠藤浩二
キャスト
ゆうこ / 星野真理
ユタカ / 西島秀俊
真希 / 岩佐真悠子
太郎 / 松尾敏伸
有楽のママ / 佐々木すみ江
ミドリ / 小山田サユリ
加藤 / 藤沢大悟
リカ / 中村愛美
有楽の常連 / 諏訪太朗
有楽の常連 / 千葉哲也
製作国: 日本 BS-I作品
配給: スロー・ラーナー
あらすじとコメント
入院中で暇でもあるし、連日の発行です。
中途半端な年齢で中途半端な生き方をしている、そんじょそこいらにいる人間たち。昨今の邦画で扱いやすい題材なのだろう。そんな一本。
横浜市の西の方。OLのゆうこ(星野真理)は、雪の晩、好意を寄せていた近くのカフェ&バーに勤めるユタカ(西島秀俊)と関係を持った。
これで恋人になれると思うゆうこ。しかし、ユタカの口からでたのは意外な言葉。「ゴメン。俺、彼女いるんだ。みどりって名前の」唖然とするゆうこ。その彼女はダイビング・インストラクターになりたいからと沖縄へ行っていたのだ。それ以後も、突如、ふらりとやって来ては当然のように彼女を抱き続けるユタカ。もしかしたら、という気持ちで拒めないゆうこ。
そんなズルズルとした関係から半年が経ち、ユタカは彼女に店の近くのスナックでバイトをしないかと持ちかける。一応悩んではみるが、頷くゆうこ。すると彼の勤める店のウェイトレス真希(岩佐真悠子)が、彼女に尋ねてくる。「ゆうこさんって、ユタカさんの彼女ですよね」否定するゆうこ。「じゃ、私が貰ってもいいですか」「でも、彼、彼女いるよ」それでも構わないと笑う真希。
呆然としているゆうこにマキは続けた。未練がましくダラダラしないほうがいいですよ・・・
等身大といえば聞こえは良いが、あまりにもしょうがない人間たちのドラマ。
現代では、普通にいるのかもしれない身勝手な人間たち。既に、心はどこかに置いてきたようだ。主人公はそんな人間たちに振り回される優柔不断な女。
年齢のせいか、価値観の相違からか、個人的にはまったく感情移入できない登場人物たち。確かに、思いつめたら真っ直ぐな若者もでてはくる。しかし、彼らとて呆気ないほど、気持ちの切り替えがきく。
見ていて、こちらも振り回された。何度か途中でリタイアしようかとも思ったが、主演の星野真理のあまりにもリアルな等身大の女性を演じきった器量に、結局、最後まで見続けてしまった。
更に、いつも掴みどころがなく、何を考えているのか解らない印象の西島秀俊も、今回はそれが見事にハマっていると感じた。どうしてこんな自分勝手で、他の女との関係を明け透けに言い、スナックに勤めろだ、やれ今度はソープで働かないかと平気でつぶやく男に惹かれるのかが不思議だった。逆を返せば、西島がそれほど役に馴染んでいるともいえよう。
どうしようもない男に惚れ続ける女。次第に、どこかでこんな男女関係の映画を見たと思った。成瀬巳喜男の代表作「浮雲」(1955)である。
映画史上の秀作と本作を比べるのは僭越かもしれないが、何となく平成版「浮雲」かとも感じた。だが、現代の登場人物たちの方が、戦後の殺伐とした時代よりも、真っ当に生きることや、将来に何ら希望を持ち合わせない、という疎外感の塊のようで不気味だ。
更に本作のリアル感を増幅させるのが、あまりにも普通すぎて、上手くないと感じさせる主役二人以外の役者たち。
ワザと観る側に違和感を覚えさせるショットによる画面構成や、全編に漂うアンニュイ感。まるで、70年代の日活ロマン・ポルノか、やるせないほどのチープさを感じさせる超低予算ピンク映画のティストだ。
どこか郷愁さえ感じさせる作品だが、どうにも排他的という印象。だが、今の若い人たちには感情移入しやすいと思える人物ばかりが登場しているのだろうか。
もしそうだとしたら、古厩監督の力量は大したものである。青春映画の佳作「ロボコン」(2004)とは全然違うティストで、青春を撮り上げる。
個人的には新しい人種たちと感じるが、それが、今では普通の人々。懐古的なものばかりに郷愁を感じているこちらの古ぼけて、疲れた人生観など愚にもつかないということだろうか。
だが、本作のティストは嫌いでないので困るのだ。