スタッフ
監督: ルイス・マイルストン
製作: オーブリィ・ベアリング、M・セットン
脚本: ロバート・ウェスターバイ
撮影: ウィルキー・クーパー
音楽: ロバート・ギル
キャスト
グレアム中尉 / ダーク・ボガード
コーコラン軍曹 / デンホルム・エリオット
ジョージ(1) / エイキム・タミロフ
ジョージ(2) / ジェラール・ウーリィ
パパドポロス艦長 / エリック・ポールマン
パトロクリス / アレック・マンゴ
プール中尉 / ラッセル・エノック
ボイド / サム・キッド
ジョージ(2)の女友達 / リザ・ガストーニ
日本公開: 1954年
製作国: イギリス メイフラワー・プロ作品
配給: 東和
あらすじとコメント
前回の「誰が為に鐘は鳴る」(1943)で、タフさと優柔不断さを併せ持つジプシーの頭目を演じたエイキム・タミロフ。そんな彼が、ギリシャ人役で出演した今では、忘れ去れた感がある戦争映画。
1942年エジプト。北アフリカ戦線で、ロンメル将軍率いるドイツ軍により、劣勢に回っていたイギリス軍。しかも、ドイツ空軍の爆撃による被害も甚大であった。
そこで、司令部はグレアム中尉(ダーク・ボガード)に、極秘任務を命令した。それは、少人数による決死隊を組織し、エーゲ海に浮かぶロードス島に密かに上陸して、敵航空基地二ヶ所を同時に爆破することであった。
そのため、他にプール中尉、軍曹二名と兵士二名が選出され、更にはギリシャ軍将校のジョージ大尉(エイキム・タミロフ)ら、計10名が組織された。彼らは、上陸後、二手に分かれて、別々の航空基地を爆破するのだ。
決死隊は夜陰に乗じて、潜水艦から密かに上陸するが・・・
実話を基にした決死隊の活躍を描く戦争映画。
ドイツ軍が占領するギリシャの島。少人数の決死隊による爆破作戦。そして、イギリス軍の隊長より格上のギリシャ軍将校が登場する。
戦争映画ファンなら、これだけでハタと膝を打つだろう。「ナバロンの要塞」(1961)である。
まさしく、その元ネタと思われる作品。しかも実話である。
ただし、割と真面目に作ってはいるが、成功作とは言い難いのだ。
それは、本作戦で生き残った本人たちから聞き及んだ実話に忠実過ぎるからである。つまり、敵前突破のサスペンスがメイン で、銃撃戦といった派手なアクションがほとんどない。ただ、確かに、細かなサスペンス・シーンには面白い点も見られる。
そんな本作で、作戦実行と同等に描かれるのは、イギリス人とギリシャ人の感性の違いである。
決死隊を運び、作戦完了後に救助に向う潜水艦の豪放磊落なギリシャ人艦長。決死隊に同行するギリシャ軍将校の二名。しかも名前が同じ「ジョージ」なので、イギリス人たちは「ジョージ・ワン」「ジョージ・トゥー」と呼ぶ。そのうち、一人は島内の村に母と妹がいるので、隊を勝手に離れて、敵軍がウヨウヨいる村へ会いに行く始末。当然、もう一人のギリシャ人が止めようとするが、逆に岩場から落ちて負傷してしまう。
それに、道案内として雇った二名の民間人。その四人のギリシャ人たちが、ことごとく決死隊の足を引っ張るという展開。
しかし、彼ら自身にとっては至って普通の行動なのだ。そこに、ギリシャ人とイギリス人の価値観や人種の違いが浮かぶ。
まるで、イギリスの若き小説家が、奔放なギリシャ人に翻弄される「その男ゾルバ」(1964)の拡張版のようである。
しかし、時は戦時下である。一致団結しなければ作戦の成功は覚束ない。考えれば、コメディ要素にもなる題材を、真面目に、緊張感を拡張させるために散りばめていく。
手法としては理解できる。しかし、作劇のメリハリから、編集のカッティングのリズム感が、どうにも中途半端である。
字幕なしのイギリス盤DVDで再見したのだが、まあ、手堅いといえなくもないが、やはり凡庸さが勝る戦争映画だと感じた。
だが、現在、ギリシャという国自体が、経済状況の悪化から、イギリスを含むEUや世界に与えている影響を知るにはある意味、好材料かもしれない。