スタッフ
監督: ジョン・ヒューストン
製作: サム・スピーゲル
脚本: ジェームス・アジー、ジョン・ヒューストン
撮影: ジャック・カーディフ
音楽: アラン・グレイ
キャスト
オールナット / ハンフリー・ボガート
ローズ / キャサリン・ヘップバーン
セイヤー / ロバート・モーレイ
「ルイザ」号艦長 / ピーター・ブル
「ルイザ」号将校 / セオドア・ビッケル
同上 / ウォルター・ゴッテル
同上 / ジェラルド・オン
ショーナ砦の将校 / ピーター・スヴァンヴィック
同上 /
リチャード・マーナー
日本公開: 1952年
製作国: イギリス ロミュラス=ホライズン・プロ作品
配給: BCFC、NCC
あらすじとコメント
今回もハンフリー・ボガートとジョン・ヒューストン監督のコンビ作。相手役が名女優キャサリン・ヘップバーンというのがミソの佳作。
アフリカ、ドイツ領コンゴ。1914年、第一次大戦が勃発し、ドイツ軍は現地人たちを兵士として召集するべく奥地まで進行してきた。
そんな時期、イギリス人宣教師セイヤー(ロバート・モーレイ)と妹のローズ(キャサリン・ヘップバーン)が、布教活動を続けている小さな村に、「アフリカの女王」号という小さな船で、物資運搬をしているカナダ人オールナット(ハンフリー・ボガート)が、ドイツ軍が近くまで来ているとの情報を持ってきた。
戦争はヨーロッパで起きているだけだし、自分たちには関係ないというセイヤー。だが、村にやって来たドイツ軍は、有無を言わさず、いきなり家屋から教会を焼き払い始めて・・・
コメディ的掛け合いが妙味を生む冒険譚。
アフリカの僻地で布教活動を続ける兄妹。当然のことながら神を敬い、厳しく自己抑制を科している。しかし、人間である。当然、感情が存在し、それをいかにコントロールするかと自問自答の日々。
そういった兄妹の人となりを描き、しかし、俗世間の常識や生活手段には疎いとニヤリとさせる幕開けから、大酒呑みで厭世観溢れる中年男が絡んでくる。
兄の方は序盤で姿を消し、たった一人残された妹は、今後、どうして良いかが何もわからない。村も焼き討ちされ、誰一人現地の人間は残っていない状況である。
そこで簡単な「人助け」の気持ちで、妹を船に乗せて連れだす中年男。
以後、この二人だけで進行する筋書きである。
しかし、そこで女宣教師の世俗にはまったく疎い反面、こんな場所にまで布教活動に来て、それを継続させられる意志の強さが頭角を現してくる。
時は戦時下、イギリス国民として、布教活動の場を奪った憎きドイツ軍への闘志がメラメラと湧き起こる。そして、船長がつぶやいた言葉に即座に反応するのだ。
何と、先の湖に停泊するドイツ軍船を撃沈しようと、言いだすのだ。しかし、汚く古ぼけたボートには、商品としての火薬こそ積んでいるが、武器などは一切積載していない。
更に、湖までの行程には、激流がいくつもあり、途中、絶対に通過しなければならない場所には、川を監視する城塞がある。当然、そこではドイツ軍が銃を構えて待っている。悪い冗談だと笑う中年男。しかし、彼女は本気だ。
だが、彼女は自分だけの思い入れだけでは成功しないと知っているし、かといって、ほとぼりが醒めるまで、適当に身を隠して時をやり過ごす気もない。
そこで、布教活動を忍耐強く続けてきた彼女の本性というか、本質が有無を言いだす。一方の中年男は単純である。
この二人のやり取りが絶妙に面白い。まったく違う感性を持った人間同士。しかし、男女でもある。
お互いが不器用で、自分の価値観というか、信念通りに単純に生きてきたが、当然『感情』はある。
そういった、おかしな恋愛模様に、激流下りや敵の襲撃、また、ワニやブヨ、ヒルといったジャングル特有の生物の脅威も登場してくる、実にメリハリの効いた展開。
しかも、ほぼ二人だけの登場人物なので、二人の演技力に懸かってくる。
その点、実に見事としか言いようのない熱演を見せる。ヘップバーンは美人ではないが、演技力には定評があり、アカデミー主演女優賞を二度も受賞した実力派である。一方のボガートは、本作でアカデミー主演男優賞を獲得した。
つまり、面白くないはずがないのである。更に興味深いのは、本作がアメリカ映画ではなく、イギリス映画だということ。そこには深謀遠慮なる背景が存在したのだ。
製作は、サム・スピーゲル。後に名匠デヴィッド・リーン監督と組み、「戦場にかける橋」(1957)、「アラビアのロレンス」(1962)を作る人物である。
ただし、今見ると、いかにも当時の単純な筋運びにして、どこかディズニーランドのアトラクションのような、妙にノンビリとしたアフリカ観光紹介映画にも見えてしまうだろうか。
それでも、個人的にはやはり「贔屓サイド」に入れる作品である。