スタッフ
監督: アンソニー・アスキス
製作: アナトール・デ・グルンウォルド
脚本: テレンス・ラティガン
撮影: ジャック・ヒルデヤード
音楽: リズ・オルトラーニ
キャスト
フリントン / レックス・ハリソン
エロイーズ / ジャンヌ・モロー
ステファノ / アラン・ドロン
メイ / シャーリー・マクレーン
マルティーズ / ジョージ・C・スコット
フリードランダー / アート・カーニー
ボンバ / リカルド・ガローネ
ガーダ / イングリット・バーグマン
ダヴィッチ / オマー・シャリフ
日本公開: 1965年
製作国: イギリス A・D・グルンウォルド作品
配給: MGM
あらすじとコメント
前回は『名ライフル』を手にしていく人間たちのドラマを描いた作品だった。今回、人々の間を巡って行くのは『超高級車』。それゆえ、持主たちも「高級」な人間たちだが、そこにこそ、ドラマが起きる。
イギリス、ロンドン。外務次官のフリントン侯爵(レックス・ハリソン)は、妻(ジャンヌ・モロー)との10回目の結婚記念日を忘れたので、僅かばかりのプレゼントとして最新式のロールス・ロイス・ファントムを贈る。それに、妻の体調がおかしかったのだが、診断の結果、全く異常がないことも彼を喜ばせたからだ。
しかし、妻は思いのほか、喜ばない。何とかなだめようとする侯爵は休養のために数週間、旅行にでも行ってきたらと言った。少し、微笑む妻。
その晩、侯爵が馬主を務める馬が優勝をかけたレースに出場する前祝を催した。そこに遊び人ゆえに女性スキャンダルが絶えないため、侯爵の思惑で南米に飛ばされることが決まった秘書官が来て・・・
超高級車を所有する人間たちのドラマを描くオムニバス作品。
貴族ゆえの鷹揚な生活。当然、対人に関しても同様な男。歳の離れたフランス人の妻は何不自由なく暮らしているが、それが逆に心に虚無感を生じさせている。しかも旦那の傍には、部下の若い色男がいる。そうなれば若い人妻が考えることは簡単であるという第一話。
第二話は、ジョージ・C・スコット扮するアメリカのギャングのボスが、踊り子の愛人シャーリー・マクレーンを連れ、ロールス・ロイスで南イタリアの故郷に錦を飾ろうとする途中で、適当に人生を楽しむ若きイタリア男アラン・ドロンと知り合うオハナシ。
そして第3話が1941年のイタリアとユーゴスラビア国境で、まだ戦争に参加していないアメリカの富豪女性イングリット・バーグマンが、レジスタンス闘士オマー・シャリフを持ち前の勝気さから、密入国させた後、自身も戦争に巻込まれるという形成である。
全話に共通するのは『恋愛』であり、それらはすべて女性目線で描かれる。
そして、超高級車の後部座席はベッドになるのだが、良くぞ、実在するロールス・ロイス社が許可したと思った。ある意味、洒落が通じるというか、広い心を持つ会社だということだろうか。
ストーリィは、イギリス上流階級への皮肉に始まり、第二話ではイタリアを縦断する観光映画になり、最後は、戦争アクション的とバラエティに富んでいるのだが、ステレオ・タイプ過ぎる人物形成と、それをなぞるだけの物語は鷹揚であり、アスキス演出も凡庸。
つまり、中々の大スターを集めながら、各人の素養が捌き切れていないのだ。
特に、当時、人気絶頂のアラン・ドロンの使い方など、コメディでもなく、かといって二枚目の役でもないという半端さ加減。そんな中でも、レックス・ハリスンやジョージ・C・スコットなど実力派は、それなりの存在感をだしているのが救い。
ラストもオチのようなものはく、まるで続編にでも食指が動きかねないのかと感じた。きっと、それはベッドにもなる車を作ったロールス・ロイス社へのある種、製作サイドの敬意なのだろうか。
そういえば、本作でちっとも、ラテン系色男に見えないアラン・ドロンって「ボルサリーノ」(1970)でも実在の会社名の付いた映画に主演していた。
なるほど、彼自身が一番の商売人てことだろうか。