実に暫く振りに「東京」からでた。行ってきたのは福島県の某温泉。
そこはJR福島駅から送迎バスで、40分ほど行く山間の場所にあり、幾つかの温泉宿が点在するだけで、土産物屋などもなく、実にひっそりとした場所であった。
その中で、建物とは別棟になる、小さな茅葺屋根の湯殿があり、更に、その並びに幾つかの露天風呂を増設しているに宿に泊った。
つまり、どの風呂に行くにも、一度、建物から外に出なければならない。折しも、寒波の影響で雪が積もり、硫黄の匂いがかなり強烈な蒸気を立ち上げる中を、僅かだが歩く。その寒さが体に沁みる。
全部の風呂に入ったが、一番気に入ったのは、小さな茅葺屋根の湯だ。三畳にも満たない小さな湯舟が一つだけポツンとあり、後ろはガラス窓で、外は雪景色。壁は十字に仕切っただけの、扉もない脱衣置き。たった一枚の仕切りで、反対側は対象形の女湯。ちょっとした「家族風呂」程度の大きさだ。しかし、実に風情があった。
他に四か所ある湯殿ではく、そこにばかり行った。湯客の多くは、広々とした他の湯殿に行くからか、いつ行っても人がいない。それこそが自身の身の丈に合っているからか。それとも、他に比べて規模や寂れ具合がしっくりと来るからだろうか。
何度も湯に浸かりながら、骨折以来の、この二年の人生を振り返った。すべて、自分の身から出た錆、何も文句は言うまい。
さて、これにて今年最後の発行になります。本年もお付き合いくださいまして、誠に有難うございました。
来年は土曜日が丁度、元旦。それでも、通常に発行予定です。個人的にこだわっている発行時間だと『初日の出』前の時刻。さてさて、どんな夜明け、そして年明けになるのでしょうか。
皆さま、心穏やかな年末年始をお迎えくださいませ。