今週初めのこと。夕刻、都心で突然のにわか雨が降った。天気予報では何も言っていなかった気がする。
降りだしたのは、このところ、週一で顔を出す安酒場に着く時分だった。東京は昨年末より、ずっと「乾燥注意報」が発令中だし、少しの「お湿り」は結構だとばかり、チビリチビリと飲み始めた。
だが、いつも通りに飲み終えても雨は止まない。かといって、いつも以上に飲むには、最近、マメに通っていることもあり、財布の中身が同意しない。じゃ、ビニール傘でも、というのも、安酒場まで徒歩で行く身分の自分としては、損した気分だ。ならば、傘を買ったと思って、もう一杯、かな。
外を眺めて考えてはみたものの、結局、仕方なく、暫く振りの雨に濡れてみた。頭に浮かんだのは「春雨じゃ、濡れてゆこう」やら「濡れてみたさの、恋の欲」なんて粋な言葉ばかり。で、暗い路地を、そぞろ歩く相手も居ず、ひとりで歩きながら、雨と言わなかった天気予報を恨むとするか、と思った。
でも、待てよ。もしかして、この雨は多くの人々の切なる願望が叶ったのか。やはり、メディアの確率云々の「情報」より大事なのは、本当に困っているからという「神頼み」なのかなと。そう考えれば、決して「冷たい雨」じゃないかもしれぬ。
翌日の朝。これでやっと「乾燥注意報」も途切れたかと思いきや、やっぱり発令中だった。
それから、未だに雨は降らない。