地下水道 – KANAL(1958年)

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スタッフ

監督: アンジェイ・ワイダ
製作: スタニスラウ・アドラー
脚本: イェルジー・ステファン・スクウィンスキ
撮影: イェルジー・リプマン
音楽: ヤン・クレンズ

キャスト

デイジー / テレサ・イゼウスカ
コラブ / タデウシュ・ヤンチャール
ザドラ / ウィエンチスラウ・グリンスキ
副官 / タデウシュ・グィアズドウスキ
スリム / スタニスラウ・ミクルスキ
作曲家 / エミール・カルチェウィッツ
クーラ / ウラディスラウ・シェイバル
ハリンカ / テレサ・ベレソウスカ
他・ポーランド国立映画アカデミー学生

日本公開: 1958年
製作国: ポーランド カードル・プロ作品
配給: 日本ヘラルド


あらすじとコメント

前回同様、東欧製の反戦的戦争映画。一時期、日本でも絶大なる人気を誇ったポーランド人監督アンジェイ・ワイダによる秀作。

ポーランド、ワルシャワ。1944年9月のこと。開戦以来、五年に渡るドイツ軍の占領に対し、ポーランド国民たちは地下運動を続けていた。ソ連軍による解放も間近だろうと一斉に抵抗運動が盛上った『ワルシャワ蜂起』に参加していたザドラ中尉(ウィエンチスラフ・ギリンスキ)率いる中隊。

しかし、圧倒的な重火器のドイツ軍に対し、自動小銃や手榴弾といった小火器でしか応戦できなく、70人いた隊員も、一ヶ月で43名に減っていた。それでも、市民である作曲家や女性、12、3歳の子供までが参加していた。

彼らはドイツ軍を迎え撃つべく、玉砕を覚悟で廃ビルに陣取った。犠牲者がでていく中、伝令が夜陰に乗じ、地下水道を通り、中心部で他の部隊と合流しろとの命令を伝えてきた・・・

悲惨で暗いが、極限状態下の人間を描く秀作。

長年ドイツ軍に占領され、過酷な状況で生き延びてきた人間たち。ポーランド正規軍は既に壊滅し、生き残った軍人たちと市民たちが協力してレジスタンス運動を繰広げていた。

しかし、所詮、素人の集まりであり、ドイツ軍に対しては相応な武器もない状態。ソ連軍による解放も囁かれているが、まだまだ先のことである。そんなある種、絶望的な状況で、全員が玉砕覚悟で一軒の廃ビルで防戦しようとする。

前半部は、ここでの戦いがメインであるが、恋人同士や優男で武器など持ったことがない作曲家と引き裂かれた家族、タフに生き抜こうとする男や、どんな状況下でも髭剃りを欠かさない清潔好きな男など、部隊内の人間模様が断片的に描かれ、後半で起きる彼ら自身の戦いへの伏線となっていく。

このあたりの戦闘シーンは開放感と閉塞感が渾然一体となり、迫力がある。

そして、一転、上層部からの命令で玉砕を念頭に置いていた部隊に退却命令が来るのだ。当然、祖国の為に潔く死にたいと願う者や、内心ホッとする人間など様々である。

そして、それからが暗く陰惨で、凄惨な地下水道での脱出行に変調していく。

汚物と汚泥で、有毒ガスが発生している。それをドイツ軍による毒ガス攻撃だと勘違いし、パニックになる隊員たち。

いきなり士気は乱れ、勝手な行動を取りだす隊員もでてくる。それは、訓練を受けた正規の軍人ではなく、市井の一市民たちであるから起きる言動である。

しかも、臭く閉鎖的な空間で、中心部までは簡単な道筋であるはずなのだが、当然、常軌を逸していけば、冷静な判断は覚束なくなる。地上ではドイツ軍がウヨウヨいるのだ。大声での伝令や、咳き込んだだけでも、それが地上へ続くマンホール近くだと、確実にドイツ軍に認知され、攻撃されるのだ。

心理的プレッシャーと汚臭と閉鎖的空間。前半で描かれた人間像がここに来て、一挙に暴発していく。

要はドイツ軍による攻撃よりも己自身との戦いになるのだ。

開戦してすぐに降伏し、以後、虐げられた国だからこそ描くことが出来た視点。監督のアンジェイ・ワイダは制作当時31歳である。

若く青臭い視点による作劇も感じられるが、それでも、人間たちが辿る絶望的な道行きを描きだす力量は大したもの。

一切の希望もなく、突き放すような作劇は好き嫌いが別れようが、戦争が人間たちに与えていく心理的作用は見るものの心を凍らせるだろう。

余談雑談 2011年2月5日
タバコ屋の店番をしていたときのこと。外の自販機に商品を入れていたら、ちょいと小洒落た60代の紳士が声をかけて来た。 近くで「もんじゃ焼き」の店を尋かれた。最近では英語圏や韓国のガイドブックにまで載る有名店がある。そこのことだと思い、道順を教