都心は櫻が満開になった。
つい先立ての夜には最大規模の余震が来たし、まだまだ不安定要素も山積みだし、それらも色々と長期化しそうな気配でもある。
それでも、春は来て、櫻が咲く。それだけで、心が少し和むと言ったら、お叱りを受けるのだろうか。しかし、その色の薄い、しかも儚い花に、これほど思いが募る国民も少ないかもしれぬ。
俗に「惜別」の花とも呼ばれる櫻。今年のは、特別な櫻になるだろう、と個人的に感じている。あの時、自分の思い上がっていた価値観を眼前で崩して行った揺れを感じた部屋の整理も何とかついた。
そんな部屋から見える、日増しに温かさを感じる青空。眼下には満開の櫻が拡がっている。だが、夜ともなれば、照明もなく、ひっそりと暗い今年の櫻並木。
それでも、満開であることに変わりはない。そっと、目を閉じただけでも、青空の櫻は拡がる。
きっと来年のこの時期には、また、満開を迎えるだろう。
自然の前では、人間の思いなり、願望は小さなものだと痛感させられる。
しかし、そんな自然の移ろいに感動させられるのも事実。こちらは待ってはくれない移ろいを感じつつ、ひとつ、ひとつ着実にこなしていくことが肝要だろうか。