余談雑談 2011年4月23日

先立ての夜。

実家から戻ると留守電が入っていた。相手は、千葉県松戸にある墓地の管理を依頼している植木屋さん。『地震で、お墓の修理の必要性があります』

毎年、春と秋の『お彼岸』には、墓参を欠かさないのだが、先月は、震災直後でもあり、もう少し落ち着いたら行こうと母と話していた。

だが、修理が必要な状態とは夢にも思わず、「墓守」の自分としては、大いに焦った。墓石が倒壊してたら、大ごとだ。いやいや、もしかして、これはご先祖様が、ここを放棄し、東京から避難しろという啓示か。

でも、どこへ。頭に浮かんだのは、イタリア人の親友がピザ屋を営むコスタリカ。あそこなら、仕事もせずに、「ドン」と呼ばれる親友に面倒を見て貰えそうだ。しかし、スペイン語はまったく話せないし、環境が違い過ぎる。それに年老いた母親を含めた家族を連れていくには障害が多い。

で、続いて考え付いたのは、何度か訪問して気に入った沖縄。ここは日本だし、コスタリカに比べれば色々と便利かもしれぬ。

でも、今住んでいる部屋や実家はどうするか。沖縄で、部屋を見つけたり、仕事を探すこともしなければならぬ。しかし、今更の自分に、何の仕事が出来ようか。

逡巡した翌朝、実家へ行き、墓地の件を母に告げ、永住避難についても触れた。母は笑って、今更、どこにも行きたくないと。

で、恐る恐る植木屋に電話を入れると、三段式墓石の上部がずれただけだが、余震で今後、倒壊の可能性があるかもしれない。なので、今の内に、元の位置に戻し、セメントで補強すれば良いとのこと。しかも費用は一万円だと。即座に修理を依頼し、母に言うと、大笑いされた。

でもな、恐れおののいて、故郷である東京の下町を捨て、避難を考えた自分。永住先で燦々と輝く太陽をイメージしていたが、一瞬にして曇ったのは自身の脆弱さゆえ、当然か。

今度の休みにでも、墓参に行くか。

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