頭上の敵機 – TWELVE O’CLOCK HIGH(1950年)

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スタッフ
監督: ヘンリー・キング
製作: ダリル・F・ザナック
脚本: サイ・バートレット、ベアン・レイ jr
撮影: レオン・シャムロイ
音楽: アルフレッド・ニューマン

キャスト
サヴェージ准将 / グレゴリー・ペック
ゲートリー中佐 / ヒュー・マーロウ
ダヴェンポート大佐 / ゲーリー・メリル
プリチャード中将 / ミラード・ミッチェル
ストーヴァル少佐 / ディーン・ジャガー
マッキルヘニー軍曹 / ロバート・アーサー
カイザー軍医大尉 / ポール・スチュワート
コッブ大尉 / ジョン・ケロッグ
ビショップ中尉 / ボブ・パッテン

日本公開: 1950年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

第二次世界大戦でのアメリカ空軍を描いた作品で繋げた。前回は、かなりシュールなコメディだったが、今回は、ズバリ正統派。共通しているのは戦争に於ける『神経衰弱』。それを真っ向描いた骨太作。

イギリス、アーチベリー。1943年秋のこと。ドイツ本土爆撃のため、急造した基地にアメリカ空軍918編成隊がいた。しかし、連日の日中爆撃のため疲弊し、被害も増大していた。

ある日、基地を飛び立った爆撃隊は他編隊と合流に数分遅れたことで、甚大な損害を被った。隊員たちにも厭戦気分が蔓延し始め、上層部への鬱憤も溜まって来ていた矢先の出来事だった。飛行隊長のダヴェンポート大佐(ゲーリー・メリル)は、運の悪さを呪い、隊員を気遣った。

しかし、918編成隊だけ被害が多いのは何らかの理由あると判断した上層部は、大佐の旧友であり、上官のサヴェージ准将(グレゴリー・ペック)に打開策を求めた。准将は渋りながらも、大佐の温情主義が風紀を乱していると答えた。

直ちに上層部は大佐を更迭し、新任指揮官としてサヴェージを任命したが・・・

過酷なストレス下にある兵士たちの心情を描く重厚なる人間ドラマの秀作。

優しく部下を思いやり、部下のミスをも指揮官である自分の責任だとかばう隊長。信頼が厚いのは当然である。

しかし、それが戦時下では逆効果だ、と情け容赦のない指揮官として、短時間で徹底的に軍紀を改善しようとする主人公。

反発や軋轢はすぐに起きる。それでも確固たる信念ゆえに真っ向対峙する主人公。しかし、個性が尊重されるアメリカでは、統一性のある軍紀どおりのお仕着せでは益々、軋轢が増長していってしまう。爆撃隊員たちとの溝は深まるばかりという進行の中で、待ったなしの爆撃命令が下っていく。

観ている側は、主人公の心の奥に流れるのは、単なる『いじめ』や『しごき』ではないことは解るが、命懸けでいつ死ぬかと日々恐怖心に苛まれている隊員には伝わらないというジレンマが綴られていく。

そんな中で、最初に主人公の心を見通すのが、地上勤務専門で、戦前は弁護士をしていたという部下。職業柄、彼のジレンマが伝わるのだが、彼自身は一緒に、命懸けで爆撃に出向く仲間ではない。しかし、だからこそ、冷静でありながら、温かい視点で見守っていけるのだ。

映画は、弁護士であった部下の視点で始まって、回想形式を取っていくという、作劇なのであるが、戦争映画でありながら、実際の爆撃なり、空中戦の場面は、最後の出撃シーンまで登場しない。

それでも、飽きさせない進行に妙味を感じた。そして最後に登場してくる戦闘場面は、ミニチュア等の特撮などではなく、全面ドキュメンタリーによる実写なので、その迫力は圧倒的。

やがて、当然、主人公を含め、隊員たち全員の心情が変化してくる。戦争であるがゆえ、戦死者もでるし、成長する者、逆に精神を衰弱させて行く者と様々。

どこか、戦意高揚的な内容でもあるのだが、底辺に流れるのは、国家への忠誠による滅私奉公ではなく、あくまで「生き残りたい」という個人の生への渇望と、それへの尊重が流れる。

観る者によって、鼓舞されるか、反戦映画と受取るかで、まったく印象が変わるであろう秀作。

余談雑談 2011年6月4日
実家の煙草屋。 「日本たばこ」は、震災以降、未だに品薄状態が続いている。なので、数少ない商品をどのように販売しようかと、老いた母と相談しつつ、商いをする日々である。 品薄も長期化し、知り合いの飲み屋から、何個でも良いから、と出前配達を依頼さ