襲われた幌馬車 – THE LAST WAGON(1956年)

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スタッフ

監督: デルマー・ディヴィス
製作: ウィリアム・B・ホークス
脚本: ジェームス・E・グラント、グエン・B・ギールグット、他
撮影: ウィルフリッド・クライン
音楽: ライオネル・ニューマン

キャスト
コマンチ・トッド / リチャード・ウィドマーク
ジェニー / フェリシア・ファー
ジョリー / スーザン・コーナー
ジミー / トミー・レティッグ
ヴァリンダ / ステファニー・グリフィン
クリント / レイ・ストラックリン
リッジ / ニック・アダムス
ハワード将軍 / カール・ベントン・リード
ノーマンド大佐 / ダグラス・ケネディ

日本公開: 1956年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

前回、前々回と『先住民とのハーフ』の子供と白人の父親が登場する西部劇だった。今回も同じだが、そんな父の姿をメインに描いた作品で繋げた。

アメリカ、アリゾナ。1873年の西部開拓時代。牧師の息子で、白人であるが、幼少時代に両親を亡くし、以後、コマンチ族に育てられたコマンチ・トッド(リチャード・ウィドマーク)。彼は部族の女性と結婚し、子供を儲けたが、白人グループに妻子を殺され復讐を誓った。

最後に残ったのは保安官になっていたビル。善戦したものの、『死の谷』の入口で、逆に捕まってしまった。その直後、ツーソンを目指す幌馬車隊と出会った二人は、食料を分けてもらうが、保安官のくせに、あまりの傍若無人なビルに腹を立てる一行。ビルの態度は更に暴走し、トッドの肩を持った少年を殴り倒してしまう。その一瞬の隙を突き、トッドはビルを殺害。そんな彼の姿を見て、何やら因縁を感じた温情派の隊長は、トッドを殺さずに馬車の車輪に繋いだ。

その夜、隊長の生意気盛りの娘と、青年が密かに、近くの河に泳ぎに行ってしまう。それを知った仲間のジェニー(フェリシア・ファー)と弟らが、後を追って・・・

人種問題をも絡めて、迫力ある展開を見せる正統派ウェスタンの佳作。

映画は、いきなり森林が横たわる渓流での銃撃戦から幕を開ける。そして主人公が、優勢に見えるものの、結局、捕まってしまうという意外な展開。

主役は指名手配中の殺人犯だが、保安官側こそ、極悪非道と描きながらも、助けてくれた一行の前で最後の復讐を果たし、捨て台詞まで吐く男として描かれる。

だが、どう見ても主人公は、単なる悪党という風情ではないのだ。

何とも、妙な設定で、どこかミステリアス。当然、一行内にも、単純に悪人と認知する者や、違う側面を嗅ぎ取る人間もいる。

ここで映画は一転、幌馬車隊の若者たちの性格描写に変調する。行く先で、弟連れで嫁ぐ予定の女性。温情派の隊長のワガママで生意気な白人の姉と腹違いのインディアンの妹。姉にチョッカイをだす、世間知らずの無鉄砲な若僧など。

主役とどう絡んでくるのかと不思議に感じた。だが、ここで、また映画は信じ難い変調を遂げる。

そのあたりの設定は、やや、ご都合主義を感じるが、それでも、主役と若者たちのみで進行しだすという、実に興味深い転調だ。

そこで、主役がインディアンとして育ち、生き延びてきたバック・ボーンが明かされていく。しかし、相手は若者ばかりで、殺人犯でもある唯一の大人を、どの程度信用して良いのかと、当然、疑心暗鬼になる。

ミステリアスでありながら、更に、主役とは別部族の「アパッチ族」まで絡んで来ての道行き。登場人物それぞれの性格がストーリィを左右し、全員が様々に絡んで翻弄されていく。

それを美しく広大なパノラマを色彩豊かに描きながら、メリハリのあるアクションや、心理描写を上手く融合させながら、何とも、快調なテンポで進行していく。

ただ、広々としたパノラマを映しながら、壮大なアクションがないなと思っていると、終盤で、ワイド・スクリーンの特性をフルに生かした戦闘シーンが登場してくる。

そのメリハリを描くデルマー・ディヴィス演出は堂に入っている。そして、彼のための映画と言い切れる主役を張ったウィドマークの圧倒的な存在感。

悪役出身だけに、影と陽が混在する演技は、見る側の感情を揺さぶってくる。

単純そうな西部劇と思わせながら、骨太な設定とアクションを混在させつつ、且つ、先読みを楽しませてくれる起伏に富んだストーリィ展開。

実に、捨て難い佳作である。

余談雑談 2011年7月9日
このところ、「生食用」の肉が騒がしい。死者まで出れば当然だろうが、個人的には残念でならない。 何せ、好きで顔を出す店は、その手の商品を扱うところが多いからだ。ただし、チェーン展開する「焼肉屋」や、何故、こんな品質で高額なのかと首を傾げる店と