スタッフ
監督: サム・ウッド
製作: サミュエル・ゴールドウィン
脚本: ジョー・スワーリング、ハーマン・J・マンキウィッツ
撮影: ルドルフ・マテ
音楽: リー・ハーライン
キャスト
ゲーリッグ / ゲーリー・クーパー
エレノア / テレサ・ライト
ルース / ベーブ・ルース
ブレイク / ウォルター・ブレナン
ヘイネマン / ダン・デュリエ
母親 / エルザ・ジャンセン
父親 / ルドヴィグ・ストッセル
マイラ / ヴァージニア・ギルモア
ハギンス / アーニー・アダムス
日本公開: 1949年
製作国: アメリカ S・ゴールドウィン・プロ作品
配給: 日本RKO
あらすじとコメント
今回もゲーリー・クーパー主演作にして、前回同様、実在の人物の伝記映画。アメリカ人の誰もが知っているメジャー・リーガーの話。
アメリカ、ニュー・ヨーク。父親は清掃夫、母親は調理人というドイツ移民の家庭に育ったゲーリッグ(ゲーリー・クーパー)は、少年時代から野球が大好きだったが、親の希望で技師になるべくコロンビア大学に進学した。
それでも趣味で野球をしている姿を見たスポーツ記者のブレイク(ウォルター・ブレナン)は、彼の非凡な才能を見抜き、ヤンキースの監督に引き合わせようとした。
しかし、ゲーリッグは、母親が大反対することを知っていたので、その申し出を断るが・・・
アメリカ球界にその名を残す大選手の波乱の人生を描く秀作。
貧しい移民の子として育った主人公。真面目に真っ直ぐ育つが、どこかマザコンの気もあるように見える。
そんな彼の才能を見抜く記者。しかし、母親はドイツにいる自慢の伯父が技師なので、息子も技師にさせたいと願っている。そもそも彼女は「野球」などに興味はなく、何らの価値すら見いだしていないのだ。
まさに『移民の国』が凝縮された設定。それでも主人公はヤンキースに入団する。初試合こそ緊張から失敗するが、以後、頭角を現し、実力をあげて行くという展開。
絶頂期のアメリカ映画らしい作劇で、単純だが、メリハリを利かせたサム・ウッド演出に呼応するゲーリー・クーパーの名演。
だが、一番目立つのは、何と言っても本人が本人役を演じるベーブ・ルース。しかもチョイ役ではなく、重要な役どころで、ほぼレギュラー出演を果たしている。その彼が中々上手い演技を披露していて、流石に非凡な人間は違うと思わせる。他にもヤンキースの主力選手たちが自身の役で出演し、花を添えている。
実際のゲーリッグなり、ルースは映画で描かれるような単純で善人な性格ではなく、あくまで映画用にカリカチュアされていると思われる。
だが、物語では、病床の少年を励ますためルースとゲーリッグの二人が当日の試合でホームランを約束するといった事実などが、散りばめられ涙腺が緩む展開。
確かに国を代表するメジャー・リーガーだ。ある程度の美化はやむを得ないし、強くて健全な「アメリカ」を象徴的に描くには、これ以上ない題材である。
それでも、本作は秀作と位置付けられる。それは、ゲーリッグ自身が樹立した14年に渡り2130試合連続出場という驚異的な記録の他に、実力も当然あり、数々の記録を打ち立てた事実。
しかも破天荒な天才ではなく、ドイツ系らしい勤勉さを持っていた。しかし、彼は後に『ルー・ゲーリッグ病』と呼ばれる難病に冒されていく。これも歴史的事実である。
そういった『男』を描く人間ドラマだ。まさにアメリカ映画がアメリカ映画であった時代を象徴する作品の一本。
それは、ルー・ゲーリッグという、類稀なる人物そのものの存在であり、アメリカを代表するスポーツのひとつであるメジャー・リーグの代表選手として、名を残す功績者であるからだ。
その証拠に、メジャー・リーグ史上、初の永久欠番になったのは彼の背番号「4」である。
ラストでの、その「4」という数字が浮かぶ後ろ姿に涙を禁じえない秀作。