「今年の一文字」が発表された。大方の予想通り『絆』である。こちらは、個人的に『一』と考えていた。今年は「2011年」だし、あれは「11日」に起きた。
発表の翌日、高校の友人と長年の恒例になっている「二人だけの忘年会」に出掛けた。
出向いたのは上野の居酒屋。7時という絶好の時間帯なのに閑散としていた。やはり景気が悪いんだな、とグダグダと映画の話などをしていた。だが、一時間もしないで満席になった。サービス残業で出足が遅いのか。大人数の忘年会も入り、注文にも支障が出たところで帰ろうと相成った。
帰路には繁華街を通る。アジア系女性やキャバクラのキャッチが多くいたが、誰も声を掛けてこない。お互いに顔を見合わせて、貧乏そうに見えるんだろうな、と笑い合った。
ふと感じた。いやいや、きっと心優しいキャッチの若い男性たちが、こちらに『絆』を感じてくれたのだろう。
多くの人々は優しい。流石の「今年の一文字」である。自分が考えた『一』とは、ひとつになる「一心同体」やら「一致団結」、震災を機に自分を見つめ直し「一念発起」とかである。
そんなことを考えてみても、風体から「一筋縄では行かない」とキャッチの若者に直感されたのか。まさか、「一か八か」と酔客のオジサンに声をかけるにはまだ、「一丁前」ではないと感じたのか。それでも声を掛けたら、「一巻の終わり」。どうにも「絆」から外れることばかり浮かぶ自分。
で、友人と別れ、地下鉄に乗り込んだ車内。師走らしく、混んでいた。周囲は、皆、疲れた表情であった。
どうせ、『一』とは、「一から出直せ」とか「初心に帰れ」なんてことなのだろう。
もしくは自分の場合、『マイナス』という意味か。