月世界一番乗り – MAN IN THE MOON (1960年)

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スタッフ
監督:バジル・ディアディン
製作:マイケル・レルフ
脚本:マイケル・レルフ、ブライアン・フォーブス
撮影:ハリー・ワックスマン
音楽:フィリップ・グリーン

キャスト
ブラッド / ケネス・モア
ポリー / シャーリー・アン・フィールド
デヴィッドソン博士 / マイケル・ボーダーン
ウィルモット博士 / ジョン・グリン・ジョーンズ
ステーペンス教授 / ジョン・フィリップス
レオ / チャールス・グレイ
レックス / ベルナルド・ホースフォール
採鉱者 / ノエル・パーセル
ホリース博士 / ニュートン・ブリック

日本公開: 1961年
製作国: イギリス アーサー・ランク作品
配給: 日本RKO


あらすじとコメント

イギリス人俳優ケネス・モア。ズングリムックリとした体型で、長身でもなく、決してハンサムでもない。それでも好きな俳優のひとり。そんな彼が主演した、いかにもイギリスらしいコメディを選んでみた。

イギリス某所。「感冒研究所」なる機関の実験材料のブラッド(ケネス・モア)は、牧場の真ん中にポツンと置かれたベッドで目覚めた。

何と彼は「恐怖」や「不安」という感情を持たず、しかも免疫力にも優れ、且つ、女性にも興味がないという超人であった。

そんな彼に眼を付けたのが原子力研究所の二名の博士。博士たちは、世界中でしのぎを削っている『月面到着第一号』のパイロットを探していたのだ。米ソに比べ出遅れているイギリスは、ある意味、スーパーマンのブラッドに白羽の矢を立てた。

博士たちは、彼を無理矢理、自分らの研究所に連れ込み、何も知らない彼に信じ難い訓練を押し付けるが・・・

何ともシニカルでブラックに満ちたイギリス製ユーモア映画。

広い牧場の真っ只中にあるベッドで目覚める主人公のシーンから始まり、そんな彼の前をストリッパーであるヒロインが横切るという唐突な出だし。

彼女は前夜、大富豪のパーティーに呼ばれ、言い寄られたが、意に召さず逃げだしてきたのだった。そんな彼女は主人公に一目惚れ。ところが、彼は感情を持たず、女性にも興味がないという奇抜な設定が生きて来る。

何とも出来過ぎ、というよりも、どうにも脱力系な感じというのが正しいだろうか。だが、主役のケネス・モアが、いつものイメージを覆すように、実に飄々と役を演じているので、奇妙なアンバランスさが醸しだされる。

前半はそんな彼のタフさ、というか、並はずれた超人さをゆったりとしたペースで描き、やがて原子力研究所に招聘されてから、ライバルでもある宇宙パイロット候補生たちに邪魔をされたり、キテレツな実験の数々をいとも簡単に、涼しい顔でこなして行くという展開にして、その描き方に拍車がかかっていくのだ。

現代では、まったく信じ難い設定の実験の数々であり、強烈に時代性を感じるものの、「空想科学映画」とは、ある意味、こうじゃなくてはいけないとも感じさせる、どこか微笑ましくもあり、何ともユーモラスな展開。

だが、やはり彼も人間であるので、当たり前だが、やがて変化が生じる。そこいらにイギリス映画らしいシニカルさと、実は、素直には寄り付けない『気質』も感じる。

徹底したブラック・コメディでもなく、どこか牧歌的。それに、今では子供でも発想できそうな「緩やかさ」を伴った内容を大人たちが真面目にコメディとして描いていることが、妙に融合しているからだろうか。

脇を固める共演陣も、派手さはないが、実に手堅く、安心して見ていける。中でも、主人公を無理矢理スカウトし管理しようとするが、逆に振り回される博士のひとりを演じたマイケル・ホーダーンが、実に良い味をだしている。力演役者とか、名優という類ではないが、飄々として洒脱。

「空想科学映画」同様、技術や事実の信じ難い進捗により、映画の内容然りだが、この手の味のある役者もいなくなったなと痛感した。

コメディであるので、当然オチがあるのだが、想定の範囲内だし、決して映画史に名を刻むような名作ではない。それでも、人間の想像力は、不便な時代だからこそ、豊かだったと想起させてくれる作品である。

余談雑談 2012年3月10日
入院中にVHSデッキが製造中止との報道がなされた。遂に来るときが来た、という衝撃を病院のベッドで受けた。さて、自宅に眠る1000本近いビデオ・テープの行方はどうなるのだ。 以前、ノートPCとビデオ・デッキを繋いでDVDにダビングする簡単ソフ