スタッフ
監督:ルイス・ギルバート
製作:ジョン・ブラボーン
脚本:エドマンド・H・ノース
撮影:クリストファー・チャリス
音楽:クリフトン・パーカー
キャスト
シェパード大佐 / ケネス・モア
アン / ダナ・ウィンター
リンデマン大佐 / カール・モーナー
軍令部長 / ローレンス・ネイスミス
参謀次長 / ジョフリー・キーン
ルットエンス提督 / カール・ステファネック
キング・ジョージ号艦長 / マイケル・ホーダーン
バニスター大佐 / マイケル・グッドリフ
アーク・ロイヤル号艦長 / マーク・ディグナム
日本公開: 1960年
製作国: イギリス マーシャム・プロ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
引き続きケネス・モア出演作。前回もそうであったが、彼は軍人役が多く、制服を着ると見事にキマる印象が強い。そんな彼の軍人姿が、画面に映える実に渋い戦争映画。
イギリス、ロンドン。1941年のこと。英国海軍司令部にシェパード大佐(ケネス・モア)が着任した。彼はすぐに鷹揚な前任者によるゆるい雰囲気を一掃しようとした。
すると、ノルウェーの監視員から、ドイツ軍の艦船が北大西洋に向け通過したとの連絡が入った。大佐は、それがドイツ軍が誇る巨大戦艦ビスマルク号ではないかと推察した。もし、それがビスマルク号だとすると、何としても大海にでる前に阻止しなけらばならない。何せ、11万5千トンもある巨艦で、自国の艦船よりも圧倒的な射程距離を誇り、太刀打ちが出来ないからである。
現実に、この2カ月でイギリスの船舶が22隻も撃沈されているのだ。この巨艦が北大西洋に進出すると、一挙に制海権が奪われかねない。
しかし、この時、すでに劣勢だったイギリス海軍は絶対的な艦船が足りず、しかも地中海やアフリカ近海に散らばっていて・・・
圧倒的な性能を誇る敵の巨艦撃沈を狙う英海軍の実話を正攻法で描く作品。
レーダー等の性能も悪く、霧の多い地域でもあり、巨大戦艦を度々見失うイギリス海軍。
メインとなるのは、ロンドンの地下司令部で指揮を取る将校。その敵巨艦の艦長は、以前、主人公が乗船していた軍艦を撃沈させた男。相手の才覚や攻撃スタイルを読み、敵の行動を推測する。
この敵同士の腹の探り合いは、潜水艦映画の佳作「眼下の敵」(1957)と共通する題材である。しかし決定的に違うのは、本作での主人公は地下司令部にいて、上官や首相からの指導なり、鼓舞が入ること。しかも眼前にあるのは生死を分ける海ではなく、せいぜい3メートル四方の海図盤。
一方のドイツ軍の艦長も似たような状況下。その巨艦には、ヒトラーのご機嫌ばかりを気にしている提督が乗船している。つまり船長が二名いるのだ。しかも、何かにつけ、過去の実績を前提に空論ばかりを推し進めようとする。
この設定は『この艦は絶対に沈まない』と過信しているタイタニックの船長に重なる。
更に、最初に対峙したイギリス軍最大の戦艦を一撃で撃沈するという幸運にも恵まれる。イギリスは意気消沈し、ドイツは更に居丈高になる。こういう展開になると、必然とラストは見えて来る。「奢れるものは久しからず」である。
ただ、どのようにその巨艦を沈めようとするのか。複数の艦船による集中攻撃や、空母からの爆撃機出動などが考えられるが、どの海域に出現するかは賭けであり、推測だけで一か所に味方を集約できない。また、爆撃機といえども、複葉機に一発づつ魚雷型爆弾を搭載するしかない。そんな状況で、いかに対戦していくのか。
戦闘とは関係なく主人公の家族の背景や、有能な女性士官との恋模様あり、戦闘でも同志討ちあり、それが、逆にチャンスを喚起したりと、正攻法だが、中々、手堅く見せて行く。
元々、後方司令部で指揮を執る主人公と遥か洋上での戦闘という、主人公に直接的感情移入がしづらく、一進一退という手に汗握る臨場感のサスペンスが足りないのは難点である。
それでも、それを充分に踏まえた上で、進行させていく職人監督ルイス・ギルバートらしさは堪能できる。
やや、イギリス映画らしいセミ・ドキュメンタリー・タッチとも呼べる作品で、派手さや目まぐるしい進行はないものの、小刻みなメリハリを利かせ飽きさせない作品に仕上がっている。