今日は悲しい日だ。
先週も書いたが、今日をもって「牛のレバ刺し」の販売が終了するから。
いよいよということもあり、特に、この二、三週間の狂走曲は、テレビ報道の扇動も激しく、凄かった。
行きつけで、それを扱う店は二軒。週末に行こうものなら、既に売切れ。
そうなると鼻先に人参の馬状態。どうせ、最終日は無理と思い、今週半ば、一軒のカウンターだけの店に行った。
夕方4時開店であったが、20分も経たぬ間に満席になり、全員が当然、注文。それ以降も、客が到着し、行列。しかも、数人単位での来店だ。無理に詰めても13人しか入れないうえ、たった今、満席になったばかり。それでも、日差しの強い中、待つと。更には、電話が度々鳴り、「レバ刺」の有無の確認である。店の方は、これじゃ、7時前に売切れだと笑った。
それほど、誰もが最後の「レバ刺」を食したかったのだろう。
自分もそのひとり。確かにその店の看板メニューであったし、30年近く通っているが、よもや、こんな日が来るとは思わなかった。
地元の職工相手の店から、本やネットで話題となり、行列のできる飲み屋になった。好物が無くなるのは淋しいが、個人的には、この狂走曲をもって、店の混雑も一段落すると嬉しい。
何てこと言ったら、店の人に、店自体がなくなっちゃうよ、と笑われた。
その店は、きれいさっぱり提供を中止すると言っていたが、怖いのは、今後、儲かるからと「闇」で販売する店と、生半可な情報と上っ面の知ったかぶりで、そんな店に行く客。
時勢に乗るのは結構だが、お互いが、プライドもなく集い、食中毒者が出る。そういう客に限って「自分は弱者」と自己詭弁をのたまうのだろうな。
法律が緩和されれば、また再開すると笑うプロの方の心意気に対して失礼だ。
店を辞しても、外は明るい青空。こっちの心は、ちっとも晴れやしないが。