或る夜の出来事 – IT HAPPENED ONE NIGHT (1934年)

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スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:F・キャプラ、ハリー・コーン
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
音楽:ルイス・シルヴァース

キャスト
ウォーン / クラーク・ゲイブル
エリー / クローデッド・コルベール
アンドリュース / ウォルター・コノリー
シャープリー / ロスコー・カーンズ
ウェストリー / ジェームソン・トーマス
ダンカー / アラン・ヘイル
ジーク / アーサー・ホイト
ジークの妻 / ブランシェ・ド・フリードリッヒ
ゴードン / チャールス・ウィルソン

日本公開: 1934年
製作国: アメリカ、F・キャプラ・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

名匠フランク・キャプラ。大好きな監督のひとりであるが、その中でも一番有名な作品にしてみた。アメリカ映画史上に燦然と輝くコメディ映画の金字塔であり、傑作。

アメリカ、フロリダ。大金持ちの一人娘エリー(クローデット・コルベール)は、父親の大反対にも関わらず遊び人の男と結婚しようとしていた。何とか、娘を説得する父親だが、ワガママ放題で育ったエリーは、益々反発するばかり。遂に感情が爆発して乗っていたクルーザーから海へ飛込んで逃げだしてしまった。

父親は使用人たちに捕まえるよう命じるが、寸でのところで逃げられてしまう。間違いなく恋人がいるニュー・ヨークに向かうはずと踏んだ父親は探偵社を総動員して見つけだすように厳命した。しかし、またもや一寸したことで出し抜かれてしまう。

そしてエリーはNY行きの長距離バスに乗り込んだ。そこで偶然居合わせたのが、NYの新聞社をクビになったばかりのウォーン(クラーク・ゲーブル)だったことから・・・

アメリカ映画がアメリカ映画であった頃の歴史的作品の一本。

ワガママで生意気。今だって沢山いらっしゃるタイプのお嬢さん。しかも、いかにも成金の娘という品のなさ。未だに記事を賑わす『ハリウッド・セレブ』がいるところを見ると、やはり永遠のゴシップ・ターゲットなのだろう。

方や、変わり者の新聞記者。彼だって好き勝手に生き、挙句、社会人として失格の烙印を押されるような男。だが、世情には詳しい。だからこそ、よく言えば「ジャーナリスト」なのだ。

この二人が知り合うが、当然、生理的にお互いが受け付けない。だから喧嘩となる。そこから、さて、どうなるか、と邪推してはいけない。

これは王道にして、以後、設定は多少、別にしろ、数多くの映画に流用されたストーリィが当然のように展開されて行く。

つまりは、二人して3200キロ離れたNYを目指す珍道中と相成っていくのだ。

当然と言えば、当然だが、単純にバスで一路NYへとは行かないのだが。何だ、それでもありきたりだな、と侮るなかれ。

その当たり前が見事なのだ。一級のスタッフに一級の役者。流れるようにスムーズなカット割から洒落た台詞。泥臭いドタバタ系でない、実にスマートな展開。

それが1時間半ほどの尺にピッタリと納まっていて、無駄な場面やカットが無い。何とも心憎い進行にして、納得の落とし所。

キャプラ監督作品は結構、長いものも多いが、これは思い切って短くしているとも感じた。それが実に功を奏したとも感じる。

また、途中で登場してくる一期一会のバス運転手や、スケベな家庭持ちなど、印象に残るサブキャラのオンパレード。キャプラ作品には、この手のチョイ役というか、後々まで印象に残る素敵で面白いキャラクターが、いつも登場し映画を盛り上げていく。

本作も然りである。何もサブキャラだけでなく、シチュエーションとしての、モーテルや乗用車、太もも、毛布、角笛など、実に心憎いものが散りばめられて行く。

現在では微笑ましいぐらいにしか受け取れないだろうが、太ももやパジャマの使い方など斬新であり、当時としてはかなりエロティックな場面もあり、とてもモダンで、斬新であったに違いない。

ストーリィとしてだけでなく、作劇法や展開など、以後の俗にいう「ラブコメ」の先陣を切った作品であり、まさしく傑作。

余談雑談 2012年7月14日
山田五十鈴とアーネスト・ボーグナインの訃報が飛び込んできた。 二名とも95歳だったとか。久しく表舞台には出ていなかったが、まだ存命だったのかと思ったのも事実。 特にボーグナインは、悪役で脇役から有名になり、アカデミー主演男優賞を真面目な映画