我が家の楽園 – YOU CAN’T TAKE IT WITH YOU (1938年)

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スタッフ
監督:フランク・キャプラ
製作:モス・ハート、ジョージ・・カウフマン、F・キャプラ
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
音楽:チャールズ・プレヴィン

キャスト
アリス / ジーン・アーサー
トニー / ジェームス・スチュワート
ヴァンダーホフ / ライオネル・バリモア
カービー / エドワード・アーノルド
コレンコフ / ミッシャ・オーア
エシー / アン・ミラー
カーマイケル / ダブ・テーラー
ペニー / スプリング・パイントン
ポピンズ / ドナルド・ミーク

日本公開: 1939年
製作国: アメリカ コロンビア
配給: コロンビア


あらすじとコメント

今回も大好きな監督フランク・キャプラ作品。彼の庶民称賛というか、貧乏でも心豊かな人間が最高であるというホーム・ドラマの集大成とも呼ぶべき傑作。

アメリカ、ニュー・ヨーク。下町のとある家。家主はヴァンダーホフ(ライオネル・バリモア)である。妻には先立たれているが、娘夫婦から孫、果ては何故か居ついてしまった人間らが、毎日、賑やか以上に、好き勝手な生活をおくる家でもある。

それは、家主の貧乏でも好きなことをして人生を送るべしという信条ゆえである。そんな彼らの家を巨大産業を経営するカービー(エドワード・アーノルド)が、工場建設用地として狙っていた。しかしバンーダーホフはどこ吹く風。

そんな折、孫娘のアリス(ジーン・アーサー)に恋人が出来た。ところが、その恋人というのがカービーの息子ト二ー(ジェームス・スチュアート)だったこことから・・・

アメリカ発の市井のホーム・ドラマの金字塔と呼べる傑作。

誰もが好き勝手に人生を謳歌するべきという信念を持つ家主。その血を引く家族の他に、赤の他人も集う家。柱に掛かっているのは『HOME SWEET HOME』(楽しき我が家)の看板。

これがすべてを物語る。花火製造に打ち込む者、おもちゃ作りに心血を注ぐ者、バレリーナを夢見る者と、てんで夢が違うが、皆が楽しそうだ。

その上、その家族を都合良く使う者や、黒人の使用人だって、家族以上にふてぶてしい。それだって、構わない。よって、常に大騒ぎ。また、金銭的には貧しいが、そんなことは問題じゃない。

そこに資本主義の代表というか、その家の地上げをもくろむ成金とその家族が絡んでくる。

紆余曲折あるものの、御心配に及ばず、ラストは大団円に決まっている。

ある意味、まるで落語の世界だ。一軒家だが、登場人物は正に落語の「長屋」の住人の世界。しかも良く出来た人情噺でもある。

キャプラの言いたいことは単純明快である。金持ちよりも貧乏人こそが本当の金持ちということ。

原題だって、そうだ。「あの世には、それを持っちゃ行けないさ」。つまり『金』である。まさしく市井の貧乏人たちの人生賛歌なのだ。

少し視点を変えれば、落語でなく、「男はつらいよ」の世界であろうか。しかも、全員が、大同小異の「寅さん」なのだ。そこには「さくら」や「博さん」は存在しない家庭である。それでもストーリィとして破綻しないのは、アメリカと日本人の気質の違いだからだろうか。

どの道、まあ、これが他人の人生だから素晴らしいと膝を打てるのだとも感じる。もし、この登場人物たちがひとりでも家族にいたり、すぐ隣に住んでいたら、決して笑ってばかりはいられまい。

つまり、自分の身近にいないから心温まると感じるのだろう。

実際、本作に登場する、食事をたかりに来るのに大上段の振る舞いをするロシア人のバレエ教師など秀逸のキャラだが、自分がイタリアに行った折、世界中を旅しているという、その家族の友人なる人物のキャラクターに、見事に重なった。ほんの数時間、夕食を共にしただけだが、その強烈なる印象は、30年以上経った今でも忘れられない。

間違いなく、あそこまで強烈なキャラは、日本人では見たことがない。もし、あの方が常にいたら、どれほど迷惑と感じるだろうかと。しかし、あくまでも映画であるから素晴らしいのだ。

残念なことに、これほどカリカチュアされた喜劇が作られなくなって久しい。

余りにも絵空事だからだろうか。だとすると、人間の感性自体が退化したと感じざるを得ない。

出演者も玉石混合ではあるが、適材適所だと思うし、何よりも名演技をみせるのは、これも映画のセオリー通り、子猫やカラスだとも感じる。

もう20回以上も見直した作品だが、それでも、まだ大好きな映画。いつもラストで、にこやかに、そして和める気持ちになれるのは何故だろうか。

それほど、人を幸せにする傑作である。

余談雑談 2012年7月21日
東京は、不意に梅雨が明けた。 何だか、梅雨末期の豪雨もなかったが、九州では記録的豪雨となり死者も出た。今後は『経験したことがない』ことが増えそうだ。何が起きるか分からない時代。備えは大事だが、日々そればかり考えていても埒が明かぬ。 何か明る