スタッフ
監督:ジーン・ケリー
製作:ジーン・ケリー
脚本:ジェームス・リー・バレット
撮影:ウィリアム・クローシア
音楽:ウォルター・シャープ
キャスト
オハンラン / ジェームス・スチュワート
サリヴァン / ヘンリー・フォンダ
ジェニー / シャーリー・ジョーンズ
オパール アン / スー・アン・ランドン
バー店主 / ロバート・ミドルトン
ポーリーン / エレイン・デヴリー
保安官 / アーチ・ジョンソン
バニスター / チャールス・タイナー
ウィロビー / ダッブス・グリア
日本公開: 1971年
製作国: アメリカ N・G・ピクチャーズ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
ジェームス・スチュワート。アメリカの良心を象徴する俳優である。幅広い役柄を演じているが、やはり西部劇は外せない。共演は、名優ヘンリー・フォンダ。監督はミュージカル俳優でもあるジーン・ケリー。一体、どんな作品なのか。
アメリカ、テキサス。ヴェテラン・カウボーイのオハンラン(ジェームス・スチュワート)の元に、二年もかかって、とある弁護士からの手紙が転送されて来た。テキサス中を転々と牛を追ってきた人生ゆえ、中々、手元に届かなかったのだ。
その手紙を読んで、いきなり職を辞し、遥か遠方のワイオミング州シャイアンに向かうと決めるオハンラン。10年も彼と一緒に働く、やはりカウボーイとしては体力的に限界を感じている仲間のサリヴァン(ヘンリー・フォンダ)も、彼に同行して来た。
旅の途中でオハンランは、たったひとりの肉親である兄が死亡し、ワイオミングで経営していた『シャイアン社交倶楽部』と全財産を自分に相続させるとの内容だったと打ち明けた。牛追い一筋の人生で将来に不安を感じていたが、これで資産家の仲間入りだと嬉しがった。
長旅の果て、目的の地に着く二人。それは鉄道の線路を越えた町外れの場所に一軒だけ立っていた。
てっきり、酒場だと思っていたが、実は『シャイアン社交倶楽部』とは・・・
何とも、ゆるくトボケた味わいだが、粋なコメディ西部劇の佳作。
夢とばかり思っていた「資産家」。牛を追い続けてきた人生の果て、やっと掴んだ夢。同行してくるのは、男のくせに極端なお喋りだが、肝心なことは何も言わない長年の相棒。
そんな二人が着いた先は「曖昧宿」。つまり、相続したのは売春宿の経営権だ。
主人公は金のためなら仕事を選ばない兄を嫌い、何十年も会っていなかったが、死んだ兄は、町では人気者にして実力者だった模様。
主人公は朴訥というか、真面目な男。面食らうのは当然。経営者亡き後、宿を支えているのは売春婦のひとりであり、他に5名の女性がそこにいた。彼女らも兄のことを絶賛し、今後もヨロシクと仰る。
ところが主人公は生真面目さゆえに閉鎖すると言いだしたから、売春婦や町中の男子から総スカンを喰らうという進行である。
相棒はただ、ニヤニヤとしながら傍観し、女性たちと上手くやるだけ。
何といっても、主人公二人を演じるスチュワートとフォンダのユルさ加減が堪らない。二人共、歳だし、肉体的アクションなどあろうはずもないが、絶妙の演技を披露していて、クスクス、ニヤニヤの連続である。
真面目を絵に書いたスチュワートと、無法者が銃を持ってやって来ると聞くと、相棒を置き去りにして、たちまち逃げだすフォンダなど、緩急の呼吸が絶妙。
しかも、保安官も主人公に危機が迫ってると一々、教えるが、自らは絶対に援護しようとはしない男。宿の女性たちもそれぞれタイプが異なり、美人揃いである。
何ともほほえましい登場人物たち。それでも、ちゃんと酒場での乱闘はあるし、銃撃戦もあるという、ツボはしっかり押さえてある進行。
ただ、派手なメリハリというよりも、全体的にどうにもユルい進行なのだが、ヴェテラン名優二名の絶妙のコンビネーションと、さりげない演出を心掛けているジーン・ケリーも監督として才気を感じさせる。
それでも、やはり、根底に流れているのは「西部劇への挽歌」である。製作された時代には、すでに西部劇が斜陽であり、多くの挽歌を謳う作品が輩出された時期。
バート・ケネディ監督に代表されるコメディ調あり、サム・ペキンパーによる暴力的終焉を激しく描く作品群や、汗と埃まみれのリアリズム調あり、とそれまでとは違う作品群が多く世にでた時期である。
それを西部劇の名作に数多く主演した大スター二名が共演し、謳い上げる。しかも肩肘張らずに、だ。
どこか、隆盛を極めたアメリカ映画自体の挽歌とも感じられる佳作である。